コードギアスログまとめ(スザク受け中心)
綴る恋など誰が読む(ルルーシュとスザク)
※『大沢さんに好かれたい。』ネタ
「ねえ、ルルーシュ」
「ん?」
夕日が差し込む、さして広くもない図書室。図書室というよりは、資料室といった方がより近いものがある。
高く組み立てられた本棚の一番上、左腕に数冊の本を抱えて、右手は順序よく抱えた本を本棚に仕舞っていく。スザクは脚立の上に座って、本棚から視線を外すことなく呟いた。
「ルルーシュは、僕の友達?」
「……当たり前だろ。スザクは大事な友達だ」
「そっか」
ぱらぱらと整理がてら返却されたばかりの本を、脚立の足元に座り込んで読む。視線は下に向けていたから、スザクがどんな顔でそんなことを聞いてきたのかなんて、ちっとも分からなかった。
「そうだよね、友達……だ」
カタン、と硬い音がした。本の背表紙が金属の仕切りに当たったのだろう。
スザクの声に、俺の胸には苦しさが込み上げる。
いっそ、「ごめん、違う。友達かどうかなんて分からないんだ」と言ってしまいたかった。
同性であるスザクに、こんなもやもやした気持ちを抱える理由が分からない。
ただ願うことがあるとすれば、この放課後の図書室で、二人で無意味に本の整理をする時間が、明日も明後日も一週間後も一年後も、出来ることならば延々と、変わらず訪れればいいということだけだった。
……………………………
「交換日記?」
「そう、なんかクラスの子の話聞いてたら面白そうだなって」
そういってスザクは、ありきたりな大学ノートを俺の目の前に差し出してきた。
「男二人で?」
「逆に面白そうだと思うけど」
どこが、と言葉にはしなくても顔に出ていたらしい。スザクは少しからかうような笑顔で続けた。
「僕たちって、無駄に長い間一緒にいるだろ? だから余計、『言わなくても相手が分かってくれる』ってところがあると思うんだ」
スザクは文庫本を下唇に押し当てて、一瞬だけ不満そうな顔をした。文庫を押し当てられた唇が、文庫によってその柔らかさを顕著にされている。一人後ろめたくなって、無理矢理視線を剥がして足元の新書に視線を移した。
「今日あったこととか、聞きたいけど直接聞けないこととか、これに書いてやり取りするんだ」
「それこそ相手に直接言えばいいだろう」
「それじゃ交換日記の意味がないよ」
「日記じゃなくても交換ノートならしょっちゅうやってるじゃないか。授業のノートで」
「あ、あれは! 僕のノートを君が一方的に借りてるだけじゃないか!」
「なにいってるんだ、スザク。その代わり、俺が解いた問題集のノートを貸してやってるだろう」
スザクがやりたいことは分かるが、やる意義が分からない。本音をいえばあまり乗り気ではない、というのもある。
男子高校生が交換日記、この時点でスザクはおかしいと思わないのだろうか。
「とにかく! 僕はもう書いたから、次はルルーシュだからね!」
「おい、待てスザク! 俺はやるなんて一言も……」
「書いたら下駄箱にでも入れといて! じゃあね、ルルーシュ。また明日っ」
言い逃げるようにしてスザクは図書室から走り去っていった。
残されたのは未整理の本と、押し付けられた大学ノート。
手にしていた文庫を置いて、ノートの表紙を開いた。
そこには本人は頑張って書いたのだろうが、読み手には解読不能一歩手前の文字が踊っていた。
見栄を張ってボールペンで書いては修正液で消された上10行。断念したのか、11行目からはシャーペンになっていた。それでも、何度も書き直したのが見て取れる消しゴムの跡が苦笑を誘った。
普段言えないことを書け、ということはこのノートにならば、このもやもやした感情を記しても許されるのだろうか。
一ページしか使われていないノートは、表紙だけ閉じればいい。ノートを閉じた時の、紙の重なる音すらろくにしなかった。
080609(080818)
作品名:コードギアスログまとめ(スザク受け中心) 作家名:てい