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その時ハートは盗まれた

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 囁かれると、阿部は弾かれたように飛び出した。スカートを翻して階段を3段飛ばしで駆け下りていく。しばらくして、みはしーと叫ぶ阿部の声が廊下の向こうから響いてきた。どこで追いつくんだろう。追いついたらきっと三橋は泣きそうになりながら真っ赤な顔で首を振るのだろう。それを阿部は宥めたり怒ったりしながら、その体をゆっくり抱き寄せるのだろう。
「上手く行った、のかな」
「さぁなー」
 どうなるかはオレたちにはわかんないけどさ、と泉は冷静っぽく言っているけれど、と栄口は思う。走り去った二人の残像を見る目はやさしくて、他人に冷たそうな泉がどれほど二人のことを考えていたかがよくわかる。浜田にしたって、横でにやにやしている田島にしたって、なんだかんだいって二人の幸せを考えている。なんだか心の中がほんわり暖かくなるのを栄口は感じた。幸せのおすそ分けを貰ったみたいに。
「っていうか阿部、あの格好で走っていったよな」
 田島がぼそりと呟く。
「あ」
 すげぇ。セーラー服のまま。化粧したまま。
「うっわ、やべぇ! オレ見にいこ」
 おい、邪魔してやんなよ、と栄口が制止する間もなく、弾丸のようなスピードで田島が階段を駆け下りていく。栄口が伸ばした手も空しく。泉が笑いながら言う。邪魔ぐらいしたっていいじゃん。
「オレたちあのバカップルに散々振り回されたんだからさ」
 その言い様に、栄口も浜田も、言った泉まで思わず吹き出す。
 涼しげな風が屋上を駆け抜けていった。


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終わり。
作品名:その時ハートは盗まれた 作家名:せんり