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【LD1】夕暮れ【ベルジャン】

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「…何か、随分とご機嫌だなベルナルド」
「そうかな、ジャンから電話があったときの俺はいつもだいたいこんな感じだけど」
「うえっ!?マジかよ、筆頭幹部様がそんな緩んだ顔してんじゃ面目たたねーって!…電話すんの出来るだけ避けよ…」

 真っ赤なフェラーリの助手席に幸運を乗せて、海岸線を気持ちよく走っていた。
 今夜は夜景の綺麗なレストランで、だ。夜景といえば山上をイメージしがちだが、そうなるとジャンが今までいたCR:5の本部に勝てる夜景は以前本部に使っていたホテルぐらいしか見当たらない。
 ならばと灯台や大きな船の行き交う様子が見えるデイバン港近くのレストランへと繰り出した。
 残念ながら俺仕切りの店ではないが、ルキーノのシマの健全な…、まあ酒を出している時点で健全とは言い難いが、女や媚売りがやって来るような店ではないので問題はないだろう。

「ジャンから電話が来なくなったら、俺がどれだけ寂しい思いをするか…」
「んなコト言って、どうせ自分からかけてくんだろ?」
「そりゃ、仕事ばっかりじゃ息が詰まるからね。たまには新鮮で甘い空気を吸いたくもなるさ」
「いい煙草吸ってんだから、それで我慢しときなさいよ」
「ハニー、仕事を優先した俺を怒ってるのか?」
「いーんや、仕事より俺を優先しようとしたあんたに怒ってんだよ」

 いつもの「ダーリン」で返してくれなかった。密かにいつも楽しみに待っているのに。

「今日はそれでいいと思ったんだよ。今は今で、宝箱を開ける前みたいにワクワクしてるしね」
「宝箱?」

 俺は気持ちよく過ぎていく潮風を後に、デイバンの中では3つ目に大きなホテルに車を乗り付けた。出る前に電話しておいたからだろう、すんなりとベルボーイが現れて車のキーを預かり、奥の部屋へと案内していく。
 ホテルのレストランは2階建てになっていて、1階は普通のレストランだが、2階はバーラウンジのような少し薄暗い、酒の匂いの篭った場所になっていた。

「…ここ初めて来るけど、あんたこんだけ暗くても平気なのけ?」
「俺もたぶん3度目くらいだよ。1回目は1人だけ下のレストランに降りてた。2回目は電気を足してもらった。3回目は…」

 そっと、ジャンの髪を撫でる。ルキーノに散々犬臭いと言われてから、シャワーは毎日入っているようだ。シルクの肌触りが指の間をすり抜ける。

「俺の横に愛しい光がいるからね、Lucky Dog。今は何ともないんだよ」

 暗い店内でも目が慣れてきているからか、ジャンが目元を赤くしたのがすぐ見て取れた。
 俺の支えになっているのだ、という自覚があるのかないのか、頭を撫でる手を振り払うことはなくただぶっきらぼうにそっぽを向く。

「さ、さっき言ってた宝箱、って何の話だよ!着いたら教えるって言ってたろ」

 照れるジャンの可愛さにもう1度、確かめるように優しく頭を撫でてから席に着き、2人とも腰を落ち着けてから、今日の株変動についての話を簡単に説明していった。
 ジャンがカポになる前の少しの間とはいえ、一時は俺と一緒に仕事をしたことで株取引の概要やちょっとした経済への興味を持ち合わせているため、すんなりと説明が入っていく。
 こういう吸収の早さが、元幹部の爺様方に気に入られる要因の1つだ。

「ふーん。会長が病気なだけでそこまで変わるもんかねー」
「CR:5だって、ジャンが病気になったらどこまで転がり落ちるか知れたものじゃない」
「えー。親父が現役の頃だったら分かるけど、まだ俺じゃあなー」
「少なくとも俺は仕事にならないね」
「……だろーな。にしても、あんた俺のこと信用しすぎだろ。電話はほんとにただの偶然で、明日の朝後悔することになっても知らねーぞ」
「そうなっても、俺は別に損をしたわけじゃない。気にしないさ」

 ジャンに賭けて負けたことなんて、1度もないけどね。
 2人で1日の疲れに乾杯を酌み交わし、意味のあるようなないような雑談をただ続けていく。
 最高に贅沢で幸せな時間が俺を包んでいた。
 これはクセになる。贅沢な酒より、最高の女より、高級な料理より、ただ、ジャンといる時間を。

「ベルナルド、…酒、飲んでいーのかよ。帰りは部下に向かえに来させんのけ?」
「せっかく楽しいのに、帰りなんて無粋な話は止めてくれよハニー。大丈夫、今夜はここに泊まっていける。前からドン・アレッサンドロが贔屓にしている部屋があってね。そこなら安全だし」
「親父は今は海の向こうだしってか。あんた、最初っからそのつもりで…」
「部下にも言ってあるさ。今夜は2人でゆっくり出来る」

 少し赤くなった顔を伏せ、乱暴に髪を掻き毟る。
 そして再び顔を上げたジャンは、入り口の方へ目線を泳がせながら拗ねたような口調で呟く。

「…こんの、エロいことしか考えてない、駄目オヤジめ」
「っつ。ジャン、あんまり可愛い顔しないでくれ。部屋に行くまでに勃っちまう」
「な、な、この変態!」

 ジャンは俺が罵られるのが好きなんだと思ってるが(ジャンに変態って言われるのは確かに相当クるんだが)、それよりむしろ、そう言っている時の口調や、拗ね方や、何よりその表情にノックダウンされている。
 俺にだけ見せる、甘えたような恥ずかしがる仕草。
 正直、ジャンの方が無意識にエロすぎる。

「マジかよ…。このエロ眼鏡…」

 机に突っ伏して肩を震わせる俺を見てどう思ったのか、ジャンの溜め息が聞こえた。

「ベルナルド。…部屋、上がろうぜ」

 むくりと形を成しかけたものが、半勃ちになるような誘い文句だった。