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【LD1】金曜の晩には薔薇を【ベルジャン】

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B×G

》金曜の晩には薔薇を

 どうしようもない感情、というか、名前のつけようのない感情。
 俺はどこに八つ当たりすりゃいいのか、誰に相談すりゃいいのかもわっかんなくて、ただ。

「どーすりゃいーんだよ…」

 買い揃えていたお気に入り、浴びるように飲んだ酒は、不味くて酔えない最低のピッピーになっていた。




 どうもこうも。
 まずは、今日の…まだ2時間も経ってない前だ。

 今日は、というか今週はルキーノについてろ、と言われて一種のお勉強ってヤツね、と思いながらアイツの後ろにくっついて回ってた。
 ルキーノのやってるシノギの内容なんてのは話に聞いてるか、ルキーノしきりの店に行くかぐらいでしか知らなかったが、随分と下の方から上の方までに派手な顔見せと、あとはその場に合った金回しで、確かにコレは勉強になる。
 机の前で文字だ、数字だ、マナー教室だとされるより、よほど俺の性格にも合った。
 ただ、ルキーノが何となく苦しい表情をしているときがあって、コイツもこんな顔することあるんだな、とか新しい発見。なるほど、爺様方をこましなれてる俺にルキーノを癒してやれという仕事でもあるんだな。
 そう感じ取った俺は、そりゃもう、時には天使のように優しく接し、時には殴った。

 それがまぁ、あんな展開になるとは思わんだろう。


 夕方。
 調子の悪そうなルキーノを止めようかと思っては、それでも笑顔を見せ続けているコイツのメンツを立てるために俺が前に出て会話を繋いで、ひとしきり済んだあたりでようやく、殴り倒してでも休ませようとしたときだった。

「ジャン…、少し、休ませてくれるか」
「ああ、あんたがそう言わなきゃ俺が言うとこだった」

 ルキーノが苦笑しながらフラリと俺の肩にもたれかかる。
 さすがに重いが、それに文句をつけられるような状況でもないし、むしろそうやって遠慮なしに休んでくれた方が俺も気が楽だ。
 俺たちを後部座席に乗せたタクシーは、ゆるやかに街中を通り過ぎていく。

「お前がいてくれて助かった。忙しくしてると気が紛れるんだが、どうも調子悪くてな」
「そー、かよ」

 人に体重かけてきておきながら、ルキーノが煙草を取り出した。俺の分の分捕ってから、火をつけてやる。ぼんやりとした煙が2つ、車の中にふんわりと浮かんだ。
 本当は聞いてたよ、一昨日あんたの奥さんと娘さんの命日だったってこと。
 そんでもって、あんたがそれを慰める言葉や感傷なんて望んでないってことも。
 だから俺は、…知らないフリに徹していた。それがバレてるとも気づかずに。

「…なぁ、ジャン。お前はなんで今週俺についてたのか聞かされてきたのか?」
「あー?俺は癒し系だから、たぶん疲れてそうな幹部のトコにデリバリーホストなんじゃねーの」
「…へーえ、そいつは知らなかった」

 肩口でルキーノが笑って震える。力のない笑い方が、妙に頼りなくて振り返った。
 それが悪かったのかもしれない。いきなり目が合って、予想以上に近い距離にびっくりした。
 反応がおもしろかったのかもしれない。ルキーノは急にニヤリとした表情に切り替えて俺の肩に手を回した。

「俺のトコのデリヘルなら、こんぐらいのサービスはして行け」

 そう言って近づいた顔は、確かにドキッとするぐらいの男前だったが、だ、けど!!

「んん…!?な、ちょ、…と」

 キス、することはねーだろ!?
 しかもわりと濃厚な、いやはっきり言ってかなり濃厚なヤツをっ!

「む…、ん…、んん…。…ぷはっ!」
「色気ないな、もうちょっと」

「っこんの節操なし!ちょっと頭冷やせこのエロライオン!」

 渾身の力を込めて鳩尾を殴った。さらにちょうど信号機で止まったタクシーのドアを開けてひょいと飛び出す。運ちゃんはよく分かっている人だったらしく、ドアを閉めるとルキーノが何か言う暇もなく発車させてくれた。
 …まさかルキーノにあんなことされると思わないだろ。しかも意味の分からないタイミングで。
 ぐるぐると回る頭の中にベルナルドの顔が浮かんだ。
 こんなことバレたら、ベルナルドの前髪がまた後退…、どころかアイツ兵隊を送っていきそうだな。
 そんなことにならないよう、後々の怨恨なんてものを作らないようにどうにか上手く取り繕ってルキーノのバカを黙らせて反省させておかなくては。

 そんなことを考えながら近場でもう1台、タクシーを拾いCR:5の本拠地に向かう、帰り道だった。
 頭の中で考えてるとその人に会う、なんてこと本当にあるのか、タクシーの中から真っ赤なあのフェラーリが見えた。路上に止めた車を発進させるところで、こちらに気づいた様子はない。
 何となく顔を合わせたくなくて助手席の後ろに隠れていて。
 気づいた。
 助手席に置いたのは薔薇の花束。
 …あれ?

 ベルナルドは俺に気づかないまま薔薇の花束とともに対向車線を進み出し、…それはつまり、あの店の方向へ進み出していて。
 そういえば今日って金曜日じゃねーの、なんてことに気がついて。
 俺、今ぐるぐるぐらぐら考えて、そんでもって…。

 もう、考えることが嫌になった。