ひとりあそび
そう言ったら、シズちゃんがすごく悔しそうな顔をした。ぎりって歯がこすれる音まできこえてきそうだ。ああいい顔だ。すごくいいよシズちゃん。そうやってなかなか俺の思い通りには動かないけれど、単純に見たい顔を見せてくれる君は、すごくいい。
「そのうち三年間のお礼をしなきゃね」
「ロクなもんじゃねえんだろ、いらねぇよ」
「それはあんたが判断することだよ、シズちゃん」
シズちゃんに指をむけて、にっこり笑ってみせる。シズちゃんは、その呼び方はすんじゃねぇっと怒鳴って、ああ殴るかなあと思って身構えたのだけど、案外すなおに彼の怒気はしゅるりと消えていったので、すこしつまらなかった。
そうして彼はもう行くと呟いて、それから一回、ドアの近くにあった掃除道具入れをがつんと蹴って、教室から出て行った。ガラス戸の揺れる音が教室に響いて、鼓膜がいたい。なんだあ怒ったシズちゃんの顔、ちょっとみたかったのになあ。
「・・・ちゅうくらいしときゃあよかったかなあ」
その反応をまた想像して俺はまたたのしくなってしかたない。道徳より倫理より快楽が勝ればべつに他はなんでもいいんだ。たのしければなんでもいいのだ。第一ラウンドは終わり。これからは第二ラウンドだよ、シズちゃん。