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双子時々ドッペルゲンゲル、処により一時兄

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「……ふーん。で、何でクルリを怒ってんの?」
イザ兄がそう云うとお母さんの顔から血の気が失せた。イザ兄は楽しくなってきたのか、更に追い打ちをかける。
「気が付いてなかったの? あははっ、自分の子供じゃん! 可哀想なクルリとマイル」
随分面白そうに云うイザ兄の声に、本当のことに気が付いたのか、お母さんはイザ兄の陰に隠れていた私を見た。でも、すぐにイザ兄が助けてくれる。
「待って、母さん。母さんのスカーフを汚したのはクルリだよ。そうだよな?」
イザ兄の問いに、クル姉が大きく頷く。
「母さんが怒ったのは仕方ない。けど対象が違う、マイルじゃない。まぁこいつらが母さんを騙したのは良くないかも知れないけど、でも原因は母さんだよ。今みたいに、何かしら決め付けてかかるだろう? 其れが、俺ら子供の立場からすると不満なのさ」
そう云うと、イザ兄はまた欠伸をする。何時も家ではあまり喋らないのに、其れが嘘みたいにイザ兄が喋ったことに、お母さんは気づいたのだろうか?
「……俺眠いからもう寝るよ。夕飯は要らない」
じゃぁ、おやすみ……。一人でどんどん話を進めるだけ進めて、イザ兄は自分の部屋へ引っ込んでしまった。
残された私たちは、とりあえずお母さんに謝る。お母さんはまだ少し青い顔をしながら、「……ううん、お母さんこそごめんね」と云った。
其の日の夕ご飯は、少し微妙な味だった。

「日本人ていうのは、『皆同じ』って云うのが好きなんだって。あと、人間ていうのは完璧じゃないから、お互いに補おうとするんだって」
早々お風呂を済ませると、私は布団の上でクル姉にイザ兄がしてくれた話をした。クル姉は相変わらず静かな儘だけれど、目をきらきらさせて私の話を聞いている。此の間、イザ兄が私たちに濡れ衣を着せたのは消えないことだけれど、私たちをちゃんと見分けてくれたのは、クル姉も嬉しいらしかった。
ちょっと信用は出来ないけれど、イザ兄は本当にすごい。
そんなイザ兄は、『人間』に興味があるって云っていた。だから私たちは相談して、『人間』になろうと決めた。でも、欠けのある人間ではいけない。完璧じゃないと、一番近くにいる人を傷付けてしまうから。
「私たち双子で良かったね? 補える相手とか探す必要ないもんね」
くじを作りながらそう云えば、クル姉が少し微笑みながら頷く。二人で色々思いついたことをくじに書きこんでいく。そして、とうとうくじが出来上がった。
「……嫌(此れ、やだ)」
「だめだよクル姉、やり直しは無しって決めたでしょ」
そんなことを云いながら、私たちはくじを引き合った。
ちょっと声が大きかったのかも知れない。「まだ起きてるのか、早く寝なさい」とドアの向こうからお父さんの声がした。気が付けば十時半だ。「はぁい」と返事をして、私たちはくじを片付けると、部屋の電気を消す。
私たちは布団の中で、明日の予定をおさらいする。髪を切るクル姉の美容院に付き添って、其の後は私の眼鏡を買いに行かなきゃならない。
明日は忙しくなりそうで、だから早く寝ないといけないのに、私は胸がどきどきしてなかなか眠れなかった。


(2010/07/15)