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葎@ついったー
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die vier Jahreszeite 003

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クリスマス・イヴの朝。
明け方家に帰るなりベッドに倒れこみ,普段ならそのまま夕方まで眠るのだけど今日ばかりはそれが許されなかった。
込み上げた欠伸をぷかりと放ちながら,丁寧に手を洗い終夜営業のスーパ・マーケットで買い込んで来た材料をキッチンに広げる。
作るケーキは二つ。
せっかくだし定番のブッシュ・ド・ノエルにしようと決めていた。
薄力粉と砂糖とアーモンド・プードルの分量をきっちり量り小さなボウルに分けておく。
卵を卵黄と卵白に分け,卵白に量った砂糖を数回に分けて加えながらしっかりと泡立てる。
ここで手を抜くとスポンジが台無しになる。すべて手作業のため仕事後の身体には相当堪えるが,それでも黙って手を動かした。
つのが立つくらい泡だったら卵黄とバニラエッセンスを入れて軽く混ぜ合わせる。
薄力粉,ココア,アーモンドプードルを篩いながらボウルに落とし,さっくりと混ぜる。牛乳も加えて混ぜ,型紙を敷いたオーブン皿に流して軽く空気を抜いてから焼く。

スポンジが焼けるのを待つ間にシロップを作る。
砂糖と水をソースパンに入れてゆっくりと砂糖を溶かす。粗熱が取れたらラム酒で風味付け。
続いてクリームに取り掛かる。

こういう作業は嫌いじゃない。
嫌いじゃない,というより寧ろ好きだ。
料理――特に菓子作りは厳密さが命。創作というよりも科学の実験に近い楽しさがあると思う。
規定のレシピにどれだけ自分の工夫を織り込むことができるか。
味だけではなくもちろん見た目にも拘る。
それを前にした者がどんな喜悦の表情を浮かべるが想像すると,腹の底がくすぐったくなるような心地がする。

やわらかく泡立てたクリームにラムのボトルを傾けようとして,俺はほんの一瞬手を止めた。
脳裏に浮かんだのは口をへの字に結び,怒りと敵意をまっすぐにぶつけてくるグリンの瞳。
それにぼんやりとアントーニョの顔が重なる。

嗚呼,と俺はひとり納得しため息を吐いた。
アイツが萎んでると気になる理由。それに漸く合点がいった。
もちろんそれだけじゃないけれど,でも,あの彩は――。

やれやれ。
ひとりごちると俺はボウルの中身を三分の一,洗ったばかりの小さなボウルに移した。
ひとり分の分け前は減るけれども,でも,菓子を食うときだけはアイツ素直な顔するからな。
悪友たちにはラム酒をたっぷりと。