I couldn't say " ".
「「………あ」」
街の喧騒が聞こえないくらい都市部の外れの路地。
前方からどこかで見たような綺麗な金髪の男が歩いてくるのは見えていたが、
まさか、こんなところで再会するなんて。
「…ゆま、っち?」
男は私の目の前で立ち止まり、問いかけ紛いの私の言葉に肯定するように
小さく微笑みを浮かべた。
少しお茶しませんか、という言葉に連れられて住宅が並ぶそこからは
少し歩いたところにあるファミリーレストランに入った。
「改めまして、お久しぶりです、狩沢さん」
「うん、久しぶりだね、ゆまっち。皆元気にしてる?」
「ええ、相変わらずっすよ」
その言葉に思わず噴き出す、それにつられてゆまっちも笑った。
私は、半年くらい前にあのワゴンから降りた。
原因は元ブルースクウェアが裏切った私達を標的と定めたのか襲撃され、
それによって私は一生足が動かなくなるほどの重傷を負った。
車椅子では車には乗れないからと理由をこじつけて、私は皆から離れたのだ。
私の足を見るたび、きっと優しい皆は自分の事を責めるから。
反対されると思ったから、私はひとりでこっそり池袋の街から離れた所に引っ越した。
誰にも話さず、誰にも知られないように。
ドタチン達ならその場は無理でも後から私の居場所を突き止められるくらいの
力はあったはず、でもドタチン達は一度も会いには来なかった。
まあ、メールや電話なら何回かあったんだけどね。
やっぱり私の気持ちをくみ取ってくれたんだと思う、優しい、優しい人達だから。
「それはそうと狩沢さん、キノの旅の最新刊読みましたー?」
「ふふん、もちのろんよ! ゆまっちこそ、スズヒト先生の画集は買ったあ?」
「それこそもちのろんっすよ!」
あの頃と一緒、一緒、一緒。
変わらず接してくれるゆまっち、私に言いたい事は沢山あるはず。
だけどそれを全て呑み込んでこんな私にも気を使ってくれるのなら、
私はその行為を無駄にしないように。
あの頃と一緒、たった半年前のことだけれど酷く懐かしい時を過ごしている気がした。
作品名:I couldn't say " ". 作家名:日丘