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BOMBER☆松永
BOMBER☆松永
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真・戦国最強伝説

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 言いながら小十郎は一瞬幸村に視線を動かした。幸村は何処か感動したようで、大きく頷きを返す。そこに政宗は平然と言った。
「挨拶なら済ませたぜ?」
「は?」
 三人の声が唱和した。政宗は呵々と笑う。
「おいおい。小十郎、お前主を甘く見過ぎちゃいねぇか? 幾ら俺でも、その程度の分別は持ってるよ。武田信玄には予め文を送っておいて、昨夜の内に館へ邪魔してきた。で、一晩宿を借りてから、早朝に出かけてきたってわけだ」
「武田殿の館に……道理で里にて捕まらなかった筈だ」
 小十郎は呆然と呟き、幸村は「さ、昨夜の間にいらしてたのかっ?!」と政宗に詰め寄る。そして佐助は今更ながら、自分の浅薄さに気付かされた。
 今回の話は突然過ぎた。それをおかしいと思うべきだった。政宗がここに来たからこそ、信玄公は今朝になって幸村を向かわせたのだ。そして、あの政宗が持っている朱塗りの瓢箪。あれは――そうだ、信玄が幾つか持っている内の、一つではなかったか。
 そうやって考えた今ならわかる。信玄は、顔を合わせれば刃を交えたがる二人に、こうして落ち着き、肩を並べて話す場を持たせたかったのだろう。禅問答を交わすこともある、自身と上杉謙信がそうであるように、真の好敵手とは戦場でのみの間柄ではないのだと――そう教えたかったのではないのか。
 では、そんな信玄の意図を、政宗は気付いていたのだろうか。佐助たちが現れたときの泰然とした風情を思い出し、佐助は考えた。だが、結局答は見つからない。少なくとも、今眼前で愉快そうに笑う若き武人は、そんな深慮遠謀など無縁に思える。
 まあ――どうでもいいか。佐助はすぐに気を取り直した。過程がどうあれ、今彼らはこうして和やかに――いや、そうなのは一名だけかもしれないが、少なくとも刃を交えずここにいる。政宗が言うところの結果All rightとは、こういうことを指すのだろう。
 実際、たまにはこういうのも悪くない。そう思う自分がいることは不思議だったが、それは不快な気持ちではなかった。
「よーし、俺様も入ろっかな、っと!」
 佐助が服を脱ぎ出すと、政宗は「Good jobだぜ、忍者のにーちゃん」と楽しそうな声を掛けた。その展開に気勢を削がれたらしい幸村は、若干憮然とした顔になりつつ、再び肩まで湯に沈む。小十郎が大きな溜息を吐きながら、馬の手綱を枝に留め始めると、政宗が声を掛けた。
「あ。お前の分の手拭いは、俺の荷物の中にあるからな」
 一瞬手を止めた小十郎は、がっくり肩を落とした。
「……随分計画的だったのですな」
「ここに至るまで気付かねぇお前が悪い」
 言って政宗が又笑うと、つられたように隣で幸村も小さく笑った。その若き竜虎の楽しげな様を見て、小十郎は仕方ないというように軽く苦笑う。政宗は言葉を重ねる。
「そうだ、小十郎――いい機会だからお前、忍者のにーちゃんにKiss markの上手い付け方教えてやれ」
 袴を脱ごうとしていた小十郎は、それを聞いて危うく平衡を崩しかけた。幸村はまたぞろ顔を真っ赤にしながら「その話題はもう十分にござる!」と叫んだ。
 目の端に涙を浮かべる程大笑いする政宗を見ながら、佐助は肩を竦める。まったく本当に――大物なのか馬鹿なのか。どちらにしろ、いずれ適わない御仁だというのは間違いない。だが、そう思うことは、いっそ痛快だった。
 それにしても。笑ったり、怒ったり、困ったり。誰もが戦場では決して見せることのない表情をして、敵同士の筈の彼らが同じ時間を共に過ごすなど、まるで夢の中の出来事みたいだ。本当に平和な世の中になれば、こういうことが当たり前になるのだろうか。
 そんなことを考えながら、佐助は湯船に足を入れた。その日が遠くなければいいなんて、柄にもない感傷的な想いも共に抱きつつ。

                              【終】
作品名:真・戦国最強伝説 作家名:BOMBER☆松永