二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
BOMBER☆松永
BOMBER☆松永
novelistID. 13311
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

真・戦国最強伝説

INDEX|2ページ/3ページ|

次のページ前のページ
 

 政宗は特に意に介した風もなく、瓢箪を口に当て軽く傾けた。そこに幸村が戻ってきたのだが、腰に手拭い一枚巻いた状態で、片手に湯桶、片手に槍という状態は、悪いがなかなか滑稽なものだった。佐助は吹き出しそうになるのを必死に堪え、政宗も何処か苦笑めいた表情を浮かべている。
 そんな二人の様子に気付かないらしい幸村は、風呂の脇へと歩み寄ると、やっと槍を足下に置く。それから、さらに少し離れた側へと移動して、湯桶で丁寧に掛け湯を始めた。
「そういえば――今日は、片倉殿は一緒ではないのか」
 佐助が気になっていたことを、幸村はさらりと聞いた。政宗も又、さらりと言葉を返す。
「ああ、確かに昨日までは後ろにいたな」
「今は見えぬようだが」
「撒いた」
「ま、撒いたぁ?」
 幸村は驚愕に似た叫びを上げた。佐助も予想外の返答に目を丸くする。
「遠乗り行くって出てきたけどよ、風呂敷背負ってたのが気になったらしくて、追い掛けてきやがった。結構しつこく食い下がってきたぜ?」
「何故内密に出かけるような真似をされるのだっ。貴殿は仮にも一国の主で御座ろうが」
 政宗と若干の距離を置きつつ、それでも肩を並べるように湯船に浸かりながら、幸村は苦言めいた言葉を漏らす。
「言ったら難癖つけて止められるに決まってるからだよ」
 平然と答えた政宗は、それから小さく笑った。
「ま――追っつけ来るだろうさ、あいつぁ鼻がいいから」
 まるで飼い犬の話でもしてるみたいだと佐助は思う。まあ、確かに佐助が見る限りでも、小十郎にはそんな感じがある。
 その会話を最後に、しばらく二人は黙って湯に浸かっていた。政宗は両の二の腕を縁に掛け、軽く目を閉じて、微かに笑ったような表情をしている。それは如何にも湯を堪能しているといった風情だ。対する幸村は、まだ何処か若干居心地が悪いような、落ち着きのない様子である。時折ちらちら政宗に視線を走らせるのは、警戒しているからなのだろうか。傍観者の立場にいる佐助には、その対比は何とも面白かった。
 不意に、幸村が口を開いた。
「――政宗殿」
「あん?」
 政宗は目を開き、幸村に顔を向けた。
「今時分の奥州は、虫が多いのか?」
 その言葉に、政宗はぽかんとした表情になる。
「いや、刺された痕が随分多く見受けられるゆえ」
「ちょ、ちょっと旦那ぁ」
 何故か佐助は慌てた。その赤斑には佐助も先から気付いていたが、同時に“それ”が何であるかを理解していたので、敢えて見て見ぬふりをしていたのだ。
「……本気じゃねぇよな、真田幸村」
 案の定政宗は、呆れたように呟いた。
「あのな、こいつぁKiss markだぜ?」
「……きすまーく?」
 政宗は額を押さえ、軽く天を仰いだ。
「Ah――つまりアレだよ。接吻痕だ」
「な……っ?!」
 幸村は目を白黒させて、次の瞬間には頬を紅潮させる。おいおい。佐助は胸の中で突っ込んだ。生娘でもあるまいに、この反応は何だってんだろう。
「それにしてもさぁ」
 こうなったら、話題に加わらない方が不自然というものだ。背と言わず肩と言わず、そのあちこちに残る痕跡を眺めながら、佐助は軽く笑う。この感じだと、昨夜のものではなさそうだが、それでもそれと判別できる程に痕が残っているということは、逆に言えば随分濃厚な時間を過ごした証に他ならない。いや、幾ら何でも激しすぎるだろう。
「えらく派手にやられちゃったもんだねぇ。もうちょい厳しく躾けた方がいいんじゃない?」
 誰を、との主語を省いた言葉も、政宗にはしっかり伝わったらしい。彼は口元に凶悪な笑みを刻んで佐助に顔を向けた。
「てめぇがご無沙汰だからって、そうやっかむなよ、忍者のにーちゃん」
 もちろん見詰める左眼は笑っていない。むしろ凶悪な光を帯びている。
「大体躾がイイからこそ、主の要望に忠実になれるってなもんだ。俺が欲しくて付けさせたんだよ。それの何処に問題がある?」
「欲しくてって、なんで、また」
 佐助は再び笑う。幸村は既に話の流れについて来られず、ただ顔を赤くしたまま、ぶつぶつ「破廉恥な」とか何とか呟きながら俯いている。
「理由なんか別にねぇよ。欲しかったから欲しかったのさ」
 あくまでも毅然とした態度は崩さず、むしろ胸を張るように政宗は答えた。
「ま、強いて言えば――甲斐まで来れば、しばらくご無沙汰になっちうだろうと思ったから、かな」
 そのとき佐助の耳が、馬の響きを聞き止めた。その重い蹄音から察するに、確かに人が乗っている。この足場の悪い山道を乗りこなしてくるとは、相当の手練れであろう。そして、この局面で思い当たる、それだけの力量を持つ人物といえば――一人しかいない。
 政宗も、それに気付いたようだ。「おう、来たな」と小さく笑う。幸村は咄嗟に槍に手を伸ばしかけたが、二人の様子に思うところがあったらしく動きを止めた。
 程なく佐助たちが来たのとは別方向の茂みから姿を現した馬上にいたのは、予想の通りに噂の主である小十郎であった。思いがけない光景を目にしたからだろう、彼は一瞬固まったが、すぐ立ち直ったように馬から飛び下りると、幸村に向かって軽く一礼し、続いて政宗の側へと顔を向けた。
「――お探し致しました」
 口調こそ穏やかだったが、若干目の据わった表情からは確かに怒りが感じられる。佐助は背筋がひやりとしたが、対象となる当の本人は全く気にした様子はない。むしろ「思ったより遅かったじゃねぇか」などと、挑発するような言葉を口にした。
「追って欲しいとの気があるのなら、それなりに動いていただかなくては」
「ちゃんと目立つところに馬を留めてたろ?」
「そこに至るまでが難儀した、と申しているのです」
「でも、お前は俺を見つけた。それなら結果All rightじゃねぇか」
 ぽんぽん続く主従の応酬は、幸村は当然として佐助にも口を挟む隙を与えない。こうなれば、ただ口を開けて成り行きを見守るだけだ。
 やがて、まったく反省した風もなく、政宗が言った。
「ほら――そろそろお前も入れ、小十郎。イイ湯だぜ?」
「……また無茶をおっしゃられる」
 小十郎は心底嫌そうに顔を顰めたが、政宗は引く素振りもない。
「何が無茶だよ。折角の温泉前にして、入らねぇなんざCoolじゃねぇぞ」
「それは屁理屈です。元々小十郎は甲斐まで湯に浸かりに来たわけでは……」
 その瞬間政宗は、突然両手を大きく動かし、湯をすくって思い切り跳ね上げた。
「わ!」
 佐助は慌てて身を翻す。小十郎も又、反射的に身を躱したが、真正面にいた彼は完全に避けきることができなかった。着物の袖と袴の裾とを濡らした小十郎を見て、政宗はにやにや笑う。
「乾かす必要がありそうだよなぁ」
「……本当に仕様のないお方だ、貴方様は」
 返す声は、もはや笑っている。あらら随分甘いねぇと、佐助は軽く苦笑した。それでも小十郎はすぐには動かず、正面から政宗を見据える。
「一つ条件があります」
「言ってみろ」
「後程武田殿のお屋敷に寄り、詫び方々のご挨拶をなさってください。領地内での勝手な振る舞いを、快く思う方はいらっしゃらないでしょう」
作品名:真・戦国最強伝説 作家名:BOMBER☆松永