ぐるぐる
色々と波乱はあったものの、無事に静雄さんと恋人同士になれたのは約1ヶ月前の出来事だった。
臨也さんの妨害にもめげず、静雄さんと2人きりの時間を頑張って作り、ようやく「付き合ってください!」と嫌われる覚悟をしつつ言うことができた。
それに「わかった」と頷いてくれた時は、驚きと喜びで本当に泣きそうになった。
あれから、僕は少しの不満と大きな不安を抱えていた。
なぜなら――
「正臣・・・恥を承知で聞くんだけど、付き合ったらさ・・・ど、どのくらいで先に進むものなのかな・・・?」
誰もいない放課後の教室の片隅で、一緒に帰るために委員会の僕を待っていてくれた正臣へ問いかけた。
「正臣、ねぇ、まさおみってば!」
「あ・・・・あぁ・・悪い・・・・・何か俺耳が遠くなったのかな」
「だからっ!つ、付き合ったらどのくらいで」
「あぁぁいや!みなまで言うな!わかったから言うな!!」
目をまん丸にして固まっていた正臣が、大きなリアクションで手を振り回す。
頭の上で両腕で×を作りながら、あぁぁぁと呻いている。
「うるさいよ、正臣。それで、どうなの?」
見上げる僕を切なそうな顔で見つめると、
「あの小さかった帝人が、俺の帝人がそんな・・・そんなことを言うようになるなんて・・・!」
「誰が正臣のだよ。ふざけると刺すよ」
「すまん。悪かった。今から俺真剣になる」
右手に握ったボールペンをカチカチ言わせると、あっさり落ち着いてくれた。(最初からそうしてればいいのに)
う~んとどこぞの名探偵のように顎を軽く右手でつかみ、あらぬ方向を見やる。
アニメの世界なら、時計の音がチッチッチッ・・と鳴っているだろう。
たっぷり1分ぐらいは経過した後、晴れやかな笑顔で
「相手が俺なら、今この時にちゅーしてくれていいんだぜ!」
ボールペンは可哀そうだったので(ボールペンが)思いっきり急所を蹴り上げた。
(同じ男だからって、手加減すると思ったら大間違いだ)
+
大してどころか全く役に立たなかった正臣を捨て置いて、僕は新たな相談相手を探しに池袋の中心部へ出てきていた。
「あ、いたっ、狩沢さーん!」
ワゴンを止めて休憩でもしていたのか、自販機の前でたむろしているワゴンメンバーを発見した。
その中でも、こういったことに一番詳しいであろう狩沢さんの名前を呼ぶ。
僕の呼び声に気づいてくれたその人は、相変わらずみかぷーと謎のあだ名で僕を呼んだ。
「俺らに用事っすか?」
「なになに?優しいお姉さんに任せなさーい」
人あたりよく返事をしてくれる遊馬崎さんにも一礼して、
「あっ、あの、男同士で」
「男同士でどうしたのっ!!?」
途中まで言いかけたところで狩沢さんが勢いよく被さってきた。
目がランランと輝いているのに少しだけ体を引いてしまったが、ここで負けてはならないとキッと見つめ返す。
「あの、し、静雄さんと・・・その、僕、つ、付き合ってるんですが、えぇとこういう場合、どんなタイミングで先に進むものなのかなと――・・・あの、狩沢さん?」
恥ずかしさを忍んで問いかけた僕の言葉の最中に、狩沢さんがめまいでも起したように手の甲を額につけてよろめいた。
大丈夫ですか?と問いかけると、がくりと膝を折ってしまった。
「か、狩沢さん!?大丈夫ですか、具合でも・・!」
慌てて引き起こそうと手を出すけれど、僕より確実に力があるだろう遊馬崎さんがススス・・と下がっていってしまう。
(え、遊馬崎さん?)
そちらを気を取られていると、差し出したままの僕の手がものすごい力で掴まれた。
ぎょっとして視線を戻すと狩沢さんの目がランランどころではなく、ギラギラと光っていた。
しゃがみこんだ姿勢で手を掴んで熱いまなざしで見つめてくる年上の女性・・・はっきり言って、
(こ・・怖い・・・・っ!!)
臨也さんの妨害にもめげず、静雄さんと2人きりの時間を頑張って作り、ようやく「付き合ってください!」と嫌われる覚悟をしつつ言うことができた。
それに「わかった」と頷いてくれた時は、驚きと喜びで本当に泣きそうになった。
あれから、僕は少しの不満と大きな不安を抱えていた。
なぜなら――
「正臣・・・恥を承知で聞くんだけど、付き合ったらさ・・・ど、どのくらいで先に進むものなのかな・・・?」
誰もいない放課後の教室の片隅で、一緒に帰るために委員会の僕を待っていてくれた正臣へ問いかけた。
「正臣、ねぇ、まさおみってば!」
「あ・・・・あぁ・・悪い・・・・・何か俺耳が遠くなったのかな」
「だからっ!つ、付き合ったらどのくらいで」
「あぁぁいや!みなまで言うな!わかったから言うな!!」
目をまん丸にして固まっていた正臣が、大きなリアクションで手を振り回す。
頭の上で両腕で×を作りながら、あぁぁぁと呻いている。
「うるさいよ、正臣。それで、どうなの?」
見上げる僕を切なそうな顔で見つめると、
「あの小さかった帝人が、俺の帝人がそんな・・・そんなことを言うようになるなんて・・・!」
「誰が正臣のだよ。ふざけると刺すよ」
「すまん。悪かった。今から俺真剣になる」
右手に握ったボールペンをカチカチ言わせると、あっさり落ち着いてくれた。(最初からそうしてればいいのに)
う~んとどこぞの名探偵のように顎を軽く右手でつかみ、あらぬ方向を見やる。
アニメの世界なら、時計の音がチッチッチッ・・と鳴っているだろう。
たっぷり1分ぐらいは経過した後、晴れやかな笑顔で
「相手が俺なら、今この時にちゅーしてくれていいんだぜ!」
ボールペンは可哀そうだったので(ボールペンが)思いっきり急所を蹴り上げた。
(同じ男だからって、手加減すると思ったら大間違いだ)
+
大してどころか全く役に立たなかった正臣を捨て置いて、僕は新たな相談相手を探しに池袋の中心部へ出てきていた。
「あ、いたっ、狩沢さーん!」
ワゴンを止めて休憩でもしていたのか、自販機の前でたむろしているワゴンメンバーを発見した。
その中でも、こういったことに一番詳しいであろう狩沢さんの名前を呼ぶ。
僕の呼び声に気づいてくれたその人は、相変わらずみかぷーと謎のあだ名で僕を呼んだ。
「俺らに用事っすか?」
「なになに?優しいお姉さんに任せなさーい」
人あたりよく返事をしてくれる遊馬崎さんにも一礼して、
「あっ、あの、男同士で」
「男同士でどうしたのっ!!?」
途中まで言いかけたところで狩沢さんが勢いよく被さってきた。
目がランランと輝いているのに少しだけ体を引いてしまったが、ここで負けてはならないとキッと見つめ返す。
「あの、し、静雄さんと・・・その、僕、つ、付き合ってるんですが、えぇとこういう場合、どんなタイミングで先に進むものなのかなと――・・・あの、狩沢さん?」
恥ずかしさを忍んで問いかけた僕の言葉の最中に、狩沢さんがめまいでも起したように手の甲を額につけてよろめいた。
大丈夫ですか?と問いかけると、がくりと膝を折ってしまった。
「か、狩沢さん!?大丈夫ですか、具合でも・・!」
慌てて引き起こそうと手を出すけれど、僕より確実に力があるだろう遊馬崎さんがススス・・と下がっていってしまう。
(え、遊馬崎さん?)
そちらを気を取られていると、差し出したままの僕の手がものすごい力で掴まれた。
ぎょっとして視線を戻すと狩沢さんの目がランランどころではなく、ギラギラと光っていた。
しゃがみこんだ姿勢で手を掴んで熱いまなざしで見つめてくる年上の女性・・・はっきり言って、
(こ・・怖い・・・・っ!!)