夕日と星空と僕等
「…そうか」
「うん」
「そろそろ時間だな」
「うん」
腕に付けた時計を眺めれば、侑斗の言う通りにもう発車時刻になる頃だった。
手頃な扉に掌をかけ、あと数分にも満たない時間を待つ。
(でも、そういえば、)
(お姉ちゃんが星を好きなのは、桜井侑斗のせいだったんだっけ)
扉に手をかけたままぼんやりとしていたリュウタロスはそこまでに思考が及んで、はたと気付く。
お姉ちゃんが好きな星を好きということは。侑斗と同じものが好きだ、ということにもなる、ということに。
「…………」
「…………」
リュウタロスは、その不意の思い付きに、どうしてかいたたまれなくなって。
逃げ出すように良太郎の身体から離れると、ただいま!といつもの様に元気よく口走りながら、リュウタロスは電車を駆けた。
「おかえり、リュウタ」
「おぉ、やっと戻って来たんか」
疼く鼓動を無視してそのまま食堂車へ飛び込めば、笑いながら返事を返してくれるウラタロスとキンタロス、そして良太郎に寄っていくモモタロスが見えた。そんな、見慣れた光景に何処か安心を覚える。
…今日は、らしくない。変なことばかり考えている。
ふと、後ろを振り返ってみれば、侑斗はすでに良太郎と話し込んでいて、こちらの視線なんてまるで気にも留めていない。再び胸の底が波立つ気がした。だけど、そんなこと関係ない。
ここにいれば、こんな不可思議な感傷だってすぐに、忘れてしまうのだから。
夕日と星空と僕等