【ヘタ百合】Happy Toy【普♀×洪♀】
馬鹿でごめん、ごめん。ほんと、ごめん。
公園まで走って、ベンチにへたりこんだ後、私は本格的に顔を覆って泣きだしてしまった。
「リズ、リズ、…泣かないで」
ごめんなさいすら言えなくて首を横に振り続ける私の髪を、マリアの両手がかきわける。
「こっち向いて、リズ」
涙でびしょびしょの顔に、マリアの白い肌と桃色の唇がひょいっと寄せられた。
まるで挨拶のついでみたいな無造作っぷりで、私のファーストキスを軽やかに奪う。
「まり…あ?」
「もらっちゃった」
マリアがにっと笑った。
「リズ、あのさあ。無理に彼氏作るくらいなら、私にしとかない?」
目がまんまるになって、戻らない。
ゆっくりしばたいたら、まつ毛にたまった雫が散った。
「…ずっと言いそびれてたんだけど、迷ってたけど、やっぱ、あんな風にリズが取られるのは我慢できない」
両手で私の頬を撫でて、じっと顔を覗き込んで、もう一度唇が近づいてくる。
「可愛いリズ」
一呼吸、ためらうように間を置いてから、唇が重なった。
「隙だらけで馬鹿で短絡的でお人よしで、愛しいよ」
マリアの銀髪が瞼をくすぐる。
マリアは嘘はつかないと知ってるし、好きも嫌いもめったに口にしないとも分かってるし。
目を開けなくてもいいと思えたから、瞼は閉じたまま。
唇をゆだねて、「彼氏彼女」の外側の関係が始まる。
***FIN***
作品名:【ヘタ百合】Happy Toy【普♀×洪♀】 作家名:佐野田鳴海