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【DRRR】第二印象、名前を聞かせて【静帝】

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 自分はもしかしなくても、とてもカモに見えるのかも知れない。
 帝人は自分の童顔さや、いつまでも垢抜けない雰囲気を少し恨みながら、この状況をどうするか5秒間たっぷり使って、いくつかの可能性を上げてみていた。
 自分を路地に引っ張り込んで囲んでいる少年たちは、自分よりもわずかに年上で、明らかに悪いことするのが好きです、と言いたそうな顔つきをしていた。
 力では敵うはずがない。
 数でも今は完全に不利だ。
 脱出路が2通り考えられたけれど、帝人の足でこの人たちに追いつかれずに人が大勢いるところまで出て行けるかは不安だった。

「だからさー、俺らも来良の出身で、お前の先輩に当たるワケ」
「後輩なんだから、先輩にはちゃーんと気遣わないとダメだろー?」
「さっさとしてくれよー。金貸してくれるだけでいいって言ってんだろ」

 これはまたベタなカツアゲに合ったものだ。
 相手が正臣なら√3点をあげることもなく、無視を決め込んでやりたくなるほどのひねりの無さだ。

 そんなことを考えつつ、仕方なく自分のカバンからサイフを引っ張り出すフリをして、逃げるチャンスを伺っていた時だった。

「おいコラ。ソレは俺の後輩だ」

 突然の低い声は、自分たちが入って来たの入り口とは反対の、路地の奥から聞こえてきた。
 暗い中、ボウッとした赤い光、煙草の火が浮かんで見える。

「誰だてめー」
「俺たちは今、コイツに用があって忙しいんだよ」

 ザリ、と火が近づいて、そしてポトリと落とされた。
 声を聞いた瞬間に想像したとおり、その煙草を持っていた指先は、バーテン服に続いていた。

「奇遇だなオイ、俺もソイツに用があるんだ」
「…っおい、こいつ!」
「やべぇ、逃げろ!!」

 サングラスにバーテンダー服。この組み合わせは見せるだけで牽制になる効果があるらしい。
 なるほど、これなら目立って仕方ない、というか目立つべきなんだろうと思う。
 さっきまで威勢良く脅していた姿が見えなくなったのを確認して、反対方向へと振り返った。
 追いかけることはしなかったが、落ちた煙草のひしゃげた様子を見ると、どうやら平和島さんが怒っているらしいのは明白だ。

「あの、すみません。ありがとうございました、助かりました」

 これで3日連続、などと緊張感なく考え事をしながら、平和島さんに頭を下げた。
 さっきまでそちらから感じていた怒気のようなものが、肌でわかるほどすうっと引いていくのがわかる。
 見上げた顔は、少しだけ眉間に皺を寄せていた。
 その手がドンと、自分に頭に乗せられる。
 たぶんこの人は置いただけなのに、首が曲がってしまうほどの重さと衝撃。それでも優しかった。

「こんな時間に1人でうろつくな」
「すみません…」

 語尾がしだいに小さくなっていきながら謝って、何となく安心感が沸く。
 乗せられた手が、わしゃわしゃと髪をかき乱し始めた。

「え、え?なに?」
「お前1人じゃ危ないだろ。送ってく」
「ええ!?」

 好き放題に髪をかき乱していた手が、実は頭を撫でていたことに気が付いた。
 手加減しようとして、髪にしか触れられていなかったらしい。
 …というか、今なんて。

「何だ、嫌か」
「いえ、そんな!わざわざ平和島さんが送ってくれるなんて、何と言うか」

 非日常すぎる。
 その言葉と本音を飲み込んで。

「嬉しくてびっくりしました」

 ありったけの思いを込めて笑顔を向ける。
 サングラスの向こうは暗くて見えないけれど、恐らくまた優しい目をしているんだろう。
 この優しさは、ホームシックにかかっている自分にとって甘すぎるくらいに心地いい。それがまた、相手があの平和島静雄さんだと言うのだから不思議だ。

「…名前」
「はい?」
「俺のことは名前でいい。苗字長ぇだろ。静雄でいいから」

 それは、これから名前を呼ぶようなフランクな友人関係になってもいいと言うことか。
 心の中と、口の中で数回、名前を呼ぶ練習を繰り返てから、声に出した。

「じゃあ、えっと…、静雄、さん、で良いですか?」
「おう」

 ふと思い出して辺りを見回すが、いつも一緒にいたあのドレッドヘアーの人は見当たらなかった。
 仕事はもう終わったのかもしれない。

「今日はお1人なんですか?」
「ああ、仕事上がりだ。帰る前にな、何か物音がすることに気がついて」

 静雄さんの職場の事務所がちょうど今いる路地のビルにあるらしい。だからその裏口から出てきたのだ、と説明されて、何だか嬉しくなった。
 今日ずっと捜していた静雄さんが、僕が見つける前に僕に気付いてくれたことに。

「あの、気付いてくれてありがとうございます」
「おう」

 並んで歩き始め、路地から出る直前あたりでぼそぼそとした声が降ってくる。

「お前のことは」
「……僕、ですか?えーと、じゃー、あのー、竜ヵ峰帝人って、僕も苗字長いし、帝人って、呼んでください」
「…おう」

 ふいっと顔をそらしながら歩いていく後ろ姿を追いかけて、他愛も無い会話を少しだけした。帰路はもう、1人の部屋を嫌がる重たい足取りではなく、浮きそうになるぐらい楽しい道に変わっていた。






きっと、上の事務所の窓からトムさんが覗いていて、笑顔で頷きながら2人の帰りを見送っていると思う。静雄、「おう」しか言ってないよ、とか心の中でつっこみ入れながら。