【DRRR】第二印象、名前を聞かせて【静帝】
翌日に、また別のファーストフード店で平和島さんとドレッドヘアーの人を見かけた。あの人と一緒にいるところをよく見る。たぶん仕事で一緒なんだと思う。
静雄さんがずっと怒らずに傍にいれるのだから、ちゃんと人間の出来た人なんだろう。
それにしても2日連続でファーストフードなんて、一人暮らし学生の自分でもやらないような不精っぷりだ。
「お、そういやこの店も来良の近くだかんなー」
「?」
「いやほら、またいた、あの子」
静雄が振り返る前に、小柄な少年は通り過ぎていて、カバンを斜めがけした背中が見えるだけだった。
偶然また会った。
いや、池袋にいるのだから、今までもすれ違ったことぐらいはあったのかも知れない。ただその頃は知り合いじゃなかったし、誰かを捜す気もなかったので気付かなかっただけなんだろう。
意外に近いところに生きていることに驚いてしまう。
「今度見かけたら、声かけてみたらどうよ」
「そう、ですね」
名前、聞かないと。
静雄は手の中の包み紙をくしゃりと潰して、その背中を目で追っていた。
「ただいま」
もしかしたら、今日もどこかで平和島さんに出くわすことがあるかも知れない。
そう思いながらファーストフード店を外からそれとなく覗いてみたり、異様な爆発音がしないか耳をすませてみたりしたが、さすがに3日連続で遭遇することはなかった。
今日も1人の部屋では、独り言になってしまった挨拶が寂しげに消えていく。
会いたい、と思うのは、あの晩の鍋がすごく楽しかったからかもしれない。
何人もの人と鍋をつつくなんて久しぶりだったし、何だか不思議なメンバーで、園原さんもいて、すごく美味しかったし満たされていた。
あんな家族団らんみたいな時間を過ごしてしまったから、急に寂しくなってしまったりするんだと思う。
だから、あそこにいて、一緒に楽しめたんじゃないかと思われる平和島さんを目で探してしまう。
「チャットで甘楽さんに言ったら、刺されそうだな。あの人、鍋に嫉妬してたし」
くく、と笑ったところで、ふと冷蔵庫を見る。そして思い出した。
平和島さんを捜すことに夢中になっていて、買い物をしようと思っていたことをすっかりと忘れていたことを。
このままでは、夕飯も明日の朝食もない。
仕方なく、帝人はカバンを肩に変えなおし、もう1度夜の池袋へと戻り始めた。
作品名:【DRRR】第二印象、名前を聞かせて【静帝】 作家名:cou@ついった