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The Summer Photograph

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そろそろ日本列島では梅雨入りが宣言され始めた頃のこと。話題にはちょうど、この夏の予定のことが上がっていた。イギリスに問われた日本は少し考えて、「今のところは出かける予定はないですね」と答えた。
 もともと日本にはあまり、避暑に出かけるという慣習がなかった。それに彼にとって、夏はかなりいそがしい季節なのだ。重要な公務があるし、8月の中頃にはお盆という年中行事もあるし、趣味のことで一番多忙を極める時期とも言える。
「そういえば、私の自宅がある地区の祭りがあるのは、いつも繁忙期の合間頃ですね」と、ふと日本は言う。
「祭り?ああ、お前んちの近くに神社があったっけな」
「ええ。参道に露天が並ぶんです。私はもう、しばらく行っていませんけれど」
 出店ではしゃくような歳でもないけれど、祭りというのはいくつになっても心躍るものだ。神社にまでは出向かないものの、毎年祭りで打ち上げられる花火だけは、自宅で愛犬と一緒に眺めている。
「お祭り?日本さんとこのお祭りがあるんですか?」
 ひょこり、セーシェルが首をつっこんでくる。私用が済んで戻ってきたセーシェルが、途中から話を聞いていたらしく、大きな目をきらきらと輝かせている。
「知ってます!映画とかネットの動画とかで見たことありますよ!いいなぁいいなぁ」
 浴衣、御神輿、食べ物のお店がいっぱい、とセーシェルは思いつく限りのキーワードをあげていく。だいたい合ってますね、と日本は微笑む。
 行ってみたいなぁ、連れてってくんないかなぁ、と全身で訴えているセーシェルに、
「こらセーシェル、あんまわがまま言うんじゃねーぞ」とイギリスがたしなめるのと同時に、
「もしご予定が入っていなければ、いらっしゃいますか?ご案内しますよ」と日本は言った。

 セーシェルが大喜びで万歳する。
 彼らの今年のヴァカンスの過ごし方が決まった瞬間だった。
作品名:The Summer Photograph 作家名:美緒