いとしご01
腫れた頬をさらして、少年は茫然とプロイセンを見返した。そういえば、手を上げるのは初めてだったかもしれない。甘やかし過ぎたのだ。己の頭と体はこういうことに向いていない。国の名も持たないこの少年を育てているのはプロイセンの権力を高める為。しかし、この少年、ルートヴィッヒはあまりに馬鹿だ。オツムがどうだかは知らないが、純粋過ぎることは、国として在るには負荷でしかない。
小さな体を担いで愛馬に跨らせる。
「背中に掴まれ」
おずおずとしがみ付く少年を、振り落として城に帰りたかった。国なのだから、滅多なことで死にはしない。死ぬとしてもそれだけ弱く、生きるに値しなかったということ。プロイセンは緩慢に愛馬を歩かせ、夜を睨んだ。
「兄さんが悪いのに」
ルートヴィッヒの呟きを、プロイセンは無視した。