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飴の蜂屋・神頼み編【鉢雷鉢】

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「心配しなくてもこづかいはいつも通り手つかずだよ」
「それはわかってるよ。どんなに言っても使ってくれないじゃないか」
「必要なときには使うって」
 確かに今日、三郎は地道に小銭稼ぎをしていた。雷蔵からこづかいをもらいながら決して簡単には使っていないらしい。その姿勢に感心する。八左ヱ門も自分で汗水たらして働いて得た金でなければ、使う気さえ起こらないのだ……
 これは芝居だろうか。金を使わず雷蔵を油断させて、いずれ根こそぎ持って行くつもりなのか。八左ヱ門は、唸った。ふと、無理やり悪意のかけらを探している自分に気づいた。
 昨日盛り上がった妄想は出ばなをくじかれ、ぽっきり折れてしまった。

 あれだけこてんぱんにやられておきながら、八左ヱ門は懲りなかったから、すごい。可能性がある限り、不安の芽は取り除きたかったのだ。
 次なる手がかりは、あの根付けくらいしかない。下働きのトモミに聞いてみることにする。根付けは案外有名なものだった。
「綺麗ですよねえ。あれ、すごく手が込んでるのに、修行中の人が作っているらしくてお得らしいですよ。売っている場所? 吉原近くだったかな……やっぱり羽振りがいい人が多いから、たくさん売れるんですかね。八左ヱ門さん、私に買ってくれません?」
「どれ、財布に聞いてみようか。うむ、嫌だって」
「もう」
 ふくれるトモミに礼を言う。僥倖。あっさり三郎が行った場所の目星がついた。
 毎日休むわけにもいかないので、兵助にも協力をあおぎ、三郎が毎日同じ方面に行っていることは突き止めた。そして今度こそは、と再び尾行を開始したのだった。