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飴の蜂屋・神頼み編【鉢雷鉢】

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 あくまで親切心で付け加える。
「夢見させろよ! ……ああ気が滅入る」
 三郎はがっくり肩を落とした。八左ヱ門はそこで自分が三郎の手を握っている理由を思い出した。
「なあ。やましいことはないって、どうやって信じさせてくれる」
 掴んだ手を握り潰すようにして、八左ヱ門は三郎を呼ぶ。ちなみに、耐えてはいるが、八左ヱ門の手の甲にもうっすら鳥肌が立っていた。
「うぅん」
 三郎は首を捻って、八左ヱ門に一歩前に出た。温い風が通り過ぎる。三郎は、そうさなあ、と言った。
「さっきあんたはお天道様の話をしたけれども、俺のなかでは、お天道様よりも上の位置に、雷蔵がいるんだ。話せば長くなるけど、雷蔵は俺にとって至高の存在なんでえ。好きとかそういうの以上に、俺は雷蔵に頭が上がらないし、何より大事」
 三郎は体ごと振り返った。八左ヱ門は、こんなにはっきりと、三郎の目ン玉を覗いたのは初めてだった。鳶色のあめ玉のなかに琥珀が散った、深い深い色だった。
「雷蔵に言えないことは絶対にやらないよ。だって悲しむから、そんなの見たくない。雷蔵を大切にしているあんたなら、分かってくれるんじゃないか」
 う、と思わずたじろぐ。
「なに、真面目に言ってるんだよ……」
 拳を作って、くたびれた履物を見た。真っすぐすぎて目を合わせていられない。何より、本当のことを言っているようなのが腹立たしい。
「なら、なんだい、おまえのやってることは旦那が知ってるっていうのか!」
「うん」
 あっさりと認められる。八左ヱ門の口がまぁるく開いた。

「うん、って……」
「雷蔵は全部知ってる。ああ、そうか。あんたは俺が雷蔵に隠れてなにかやってると思ったわけか」
「おまえが蜂屋を乗っ取ろうとしてると、今も思っている」
 一拍。三郎は、鳥がけえけえ鳴くようにけたたましく笑い出した。
 何事かと足を止める物売り、町娘。酔っぱらいかあ、と勝手に納得して、他人はまた散って行く。そう見てくれた方が八左ヱ門としてはありがたい。
「俺が、蜂屋を! へえ!」
 三郎は、新しいものに気づいたような口ぶりで体を震わせている。
「ブッ飛んだ想像だな。自分で考えたんだろ? まあそう顔をしかめなさんな。全部言っちまえよ」