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飴の蜂屋・神頼み編【鉢雷鉢】

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「そうだねえ……私たちがい今やっていることの話はあとにしようか……、こら三郎、お貸し」雷蔵はだらしなく濡れたままの、三郎の髪を拭いてやった。「話はまず私たちの親の代、ううん、もっと昔から始まるんだ」
「そ、そんなに昔ですか」
「おや。すでに意外そうだねえ。その調子じゃあ、ついてこれないよ」
 雷蔵が片目をつむる。
「……ねえ八左ヱ門は忍って知っているでしょう。そう、猿飛佐助や霧隠才蔵。おまえはあの本を好いていたっけね。物語の中では派手だけど、忍は本来、かげ の者。地道な情報収集と適切な掌握術。……忍は戦でこそ活躍できた。誰も気付かない場所で、確実に味方に利益をもたらすことが忍の使命だったんだね」
 物語でこそ景気良く活躍する忍は、その実、ひどく地味だったことは知識として知っていた。だが、それが一体?
「さて、争いも減り、平定されたこの世、忍の需要は減って、幕府お抱えの者が数名残るのみ。悲しいものだねえ。……それでね八左ヱ門。私の家をたどるとね、もとは民に紛れていた忍なんだよ」
「!」
 驚きすぎて、意味のある言葉が出なかった。
「私の父は元忍でね。地道に潜伏やらなにやらやっていたのが、いよいよ食い扶持が稼げなくなって、たまたま手に入った砂糖で飴を作ってみたら大儲け。おま えも知っての通り、商才があったんだ。そこで飴の蜂屋が始まったわけさ。ところで八左ヱ門、うちの店の名前だけれど、なんで『蜂屋』なのか知っている?」
 八左ヱ門は首を振る。
「……そうだね。じゃあ、三郎」
「なんだい?」
「八左ヱ門に、おまえの名前を教えてやってくれないか?」
「ん? ああ、なるほど、そゆことね」
 三郎は正座に直って、拳を膝に置いた。そして似合わないことに、これまた恭しく頭を下げた。
「お初にお目にかかります。私、鉢屋三郎と申します。私の父は、雷蔵の父上の片腕として働いていた忍です。それゆえ、実は雷蔵とは血が繋がっておりません」
 三郎が顔を上げたとき、あんなに特徴的な雷蔵の癖毛が、さらさらとした指通りの良さそうなものへと変わっていた。
 顔は、別人。
 気絶しなかった自分を誉めてやりたかった。