二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

飴の蜂屋・神頼み編【鉢雷鉢】

INDEX|22ページ/42ページ|

次のページ前のページ
 

「なに」
「なんで俺に話す気になったんだよ!」
「……」
 三郎は答えなかった。いや、むしろ、そういう答え方だったのかもしれない。
 雨は、すさまじかった。途中寄った場所もあったことで、よけいに鼻と口が水で侵されていた。さながら水責めのようだった。とんだ家路だったので、雷蔵の出迎えが一層、仏のようにありがたく神々しい。豪雨で商売あがったりの蜂屋は、早めの店じまいの最中だった。
「わ、おかえり! あれ、八左ヱ門まで!」
 まとめて風呂に入らされて、雨を洗い流す。(八左ヱ門は身分差など考えている暇がないくらい、芯から冷えてしまっていた。三郎も当然異論はないようで、男二人黙々と入っていた。)温まり、ほっと人心地がついたところで、二人で離れに向かった。
「最近あたたかいとはいえ、雨では寒かったろうに。ささ、お飲み」
 雷蔵は空いている手で生姜湯を二人分渡す。そっと口に含むと、口、喉、鼻にかけてつんと生姜が香った。程よい甘さで、店にある生姜飴を思い出した。
 三郎は、熱い生姜湯を器用にもごくごく飲み干し、口元を腕でぬぐった。
「八左ヱ門に、調べもののことをちょっと話したよ」
「ああ、そうかい。どこまで聞いたんだい、八左ヱ門」
「はあ」
 そう言われても、八左ヱ門自身はいったい何をちょっと話したのかがわからない。
「あの、誰かしの頼みごとを引き受けて、屋敷に忍び入ったのはわかりました。でも、なんでそんなことになったとか、その他はよくわからなくて……。あのう、蜂屋はなにか、お客の依頼を受けるたぐいの仕事を始めたのでしょうか? ……」
 雷蔵が眉を寄せる。
「こら、三郎。いろいろはしょったね。かわいそうに、八左ヱ門が混乱してしまっている」
「ごめん。俺だけでは説明しづらいし、時間かかるし」
 三郎は少しばつが悪そうにして、そして雷蔵は苦笑して、首を傾げた。
「どこから聞きたいかな?」
 八左ヱ門はその問いにすぐ答える。
「全部です。俺に黙っていること、全部教えて下さい」
「……いい? 三郎」
 八左ヱ門といる時よりも、幾分幼くなった表情で、三郎は小さく頷いた。
 そして、雷蔵が話し出した事実は、八左ヱ門の想像さえ遥かに凌ぐこととなる。