旬
「そうじゃなくて、僕はミクを元に戻して欲しいんです。あの、ミクは以前はもっとよく喋ったし、表情も豊かで、少なくともあんな風じゃありませんでした」
「機能に異常はありませんので、お客様の言う『以前のように』というのは私どもにはできかねます」
「そんな…じゃあどうすればいいんですか」
「『以前のよう』なカスタマイズをするしかありません。ですが、それがどんなものかは…」
「……またずっと家にいろってことか」
「あまりにも型が古いですし、どうでしょう、いっそ買い替えてみてはいかがですか。最近のはどれも自動作曲機能が付いて当たり前だし、最新型はセクサロイドとしても利用できるんですよ」
「い、いやだ」
「ですが古い型というのは、時間が経つとメンテナンスが難しくなります。今回は良かったとしても、次回はメンテナンス自体が可能かどうか」
「嫌だ! 俺はこのままでいい!」
「……とにかく、我々は手を尽くしましたし、メンテナンスは完了しました」