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パロ詰め合わせ1

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1.モンハンパロ



 ギルドでクエストを選択するとき、重要視することはふたつある。
 ひとつはもちろん内容だ。期限がないか、希少種ではないか、どのていどの重要性かあるかなどがひとつ。
 そしてもうひとつは素材だ。金銭など実際あまり関係ない。いかにいま必要な素材をそのクエストで得られるか。これがもっとも重要な要素だったりする。
 そんなふたつを良く考えてクエストを受ける。まだハンターになって日も浅い新米なアルフレッドには選べるクエストもまだまだ少ないのだが、それでも迷うていどには数も種類も用意されている。
「やっぱりモンスターを倒すのがいいな! なんたって俺はハンターだ、っいて!」
「だからバカだって言うにゃ!」
「あ、アーサー!」
 後ろからなにか硬い物で頭を叩かれたので振り返ると、そこにはいつもの猫パンチが先端についたステッキを持って眉を吊り上げているアーサーがいた。怒り心頭、という感じで髪と同色のミルクティー色の毛が逆立っている。
 アーサーはアルフレッドとおなじ人間ではない。姿形は人間に似ているが、アイルーと呼ばれる種族だ。
 頭には猫のような三角の耳がついていて、肉の薄いこじんまりとしたお尻には長くてしなやかな猫のしっぽもついている。毛はミルクティー色で、髪の色と同色だ。瞳もエメラルドのようなグリーンで、人間ではみたことないほどに濃い。
 アイルーは人とおなじ言葉を使うが、語尾になぜか「にゃ」がついてしまう。これはどうやっても直せないものらしく、アーサー自身も言いたくて言っているわけではないらしい。
「どうしてきみがここにいるんだいっ?」
「どうしてじゃないにゃ! 討伐や狩猟クエストばっかり受けてないで、たまには採取クエでも受けるにゃ!」
「ええー! だってつまらないじゃないか!」
「つまるつまらないの話じゃないにゃ!」
「あー、もー、ほんっとにアーサーはにゃんにゃんにゃんにゃんうるさいなあ!」
「そんなににゃんにゃん言ってないにゃ!」
 ヒステリックにそう叫んで、耳としっぽの毛を逆立ててアーサーは子どもみたいに地団駄を踏む。顔も真っ赤で眼に涙さえ溜まりだした。
 からかうと面白いのでついやりすぎてしまうのだが、このままではギルドで本格的に大泣きされてしまう。そうすると目元が赤くなったまま家に帰ることになり、あの自称お兄さんに遠まわしにちくちく嫌みを言われるだろう。
 それは面倒だな、と溜息をつき、とにかく目の前のこの猫を落ち着かせようと右手を伸ばす。
 怒りと興奮でふーふー言っているアーサーは、獲物でも狙うような瞳でジッとアルフレッドの右手を見ているが、噛みついてくるようなこともなくおとなしくしている。いろいろと口煩いくせに態度だけは従順なへんてこさに思わず笑ってしまって、ごまかすように右手でアーサーの頭をぐしぐしと撫でてやった。
「よしよし、もうわかったよ。だから落ち着いてくれ」
 ピンと立った三角の耳も巻き込むように撫でていると、アーサーの気持ちも落ち着いてきたらしい。殺気立った碧の瞳がゆるりと細まり、それでも撫で続けているとうるうると潤んでくる。プライドの高いアーサーはめったにしないが、普通のアイルーならばゴロゴロとのどを鳴らしているだろう。
「ところでアーサー、きみはなんでここにいるんだい」
「あっ! そうだったにゃ!」
 はたと気付き眼を見開いたアーサーから右手を引く。彼は乱れた髪を整えるように一度自分の手で撫でつけてから、おつかい用のななめがけしてあるポーチに手を伸ばした。
「フランシスに、サシミウオ買って来いって頼まれたのにゃ」
 そう言ってポーチの中からお金を出す。サシミウオ一匹買いに来たにしては持っているお金が多い。それに、フランシスの頼みをアーサーがこんなにも素直に聞くのもめずらしいことだ。ということは、おつかいを頼まれた代償になにかアーサーの好きなモノを与えられているはずである。
「フランシスに、おつかいに行く代わりになにか買ってもいいって言われたね……」
 アーサーは露骨に肩をびくつかせて「にゃっ!」と裏返った声を出す。
「にゃ、にゃ、にゃんの、ことかにゃ!」
「いいかい。食事代は俺がだしてるんだぞ。だから俺にも聞く権利はあるはずだ」
「う、うう」
「アーサー」
「ふ、フランシスが、あまったお金でマタタビを買ってもいいって言ったにゃあ」
「そんなことだろうと思ったよ。はい、没収だぞ!」
「ひどいにゃ! 鬼にゃ!」
「鬼でけっこうだぞ! きみ、毎回マタタビで悪酔いして俺に迷惑かけてること忘れたのかいっ」
「うっ!」
 いままで噛みつくようにこちらを睨んでいた表情がとたんに曇る。自分でもこれまでにまたたび関係でどれだけ迷惑をかけてきたか自覚があるらしい。
「マタタビ禁止だぞ。だから没収。ほら、魚を買いに行くよ」
「うう、俺のマタタビがにゃあ」
 悲痛な声をあげてほろほろと涙を流しながらも、アルフレッドが歩き出せばアーサーはおとなしく後ろをついてきた。オトモアイルーとしての本能なのか、それとも従順な性格ゆえなのかわからないが、とにかくついてくるのならそれでいいだろうとアルフレッドはギルドを出た。
 商店でサシミウオを買っていつまでもべそべそ泣いているイギリスを連れて自宅に帰る。入ってすぐの寝室にしている部屋にまで奥にあるキッチンから良いにおいが漂ってきている。
「良いにおいだなあ。ほらアーサー、フランシスに魚持っていってあげなよ」
 ぐすぐすと鼻を鳴らしながらもおとなしく魚を受け取って、アーサーはキッチンへ向かう。その背中を見えなくなるまで見送ってから、アルフレッドは重く長い溜息をついた。
 泣かれるのは苦手だ。とくに、アーサーの涙はひどく心ぐるしい気分になるので一番好きじゃない。
 けれど、マタタビだけは渡すわけにはいかない。アーサーがまだこの家に来て間もないころ、採取して無造作に置いていたマタタビで酔って、多大な迷惑をかけられたのだ。
 人間でいうところの、酔うと性格が変わる種類らしい。
 普段は尊大だが面倒見が良く、理性的でしっかりと己を思ってるお硬いアーサーが酔うと服は脱ぐ暴れる叫ぶ泣くと性格が豹変する。しかもちょっとエロい気分になるらしく、迷惑この上なかった。
 はあ、と溜息をつき、アルフレッドはぼりぼりと後頭部を掻いた。
 マタタビはまずい。あとのことを考えると、どうしても渡すわけにはいかない。なんたってあの一件があってから鍵付きの箱を買ってそれに保管するくらい厳重にしたのだ。そうしなければならないと思うほど、マタタビ酔いをしたアーサーは迷惑だった。
 けれど、あれだけ悲しそうにされたまま放置するのもアルフレッドは気が引けた。なにせ新人ハンターであるアルフレッドの家にオトモとして一番に来てくれたのがアーサーなのだ。新米であるアルフレッドは狩りに連れていくオトモアイルーと家のキッチンで料理をつくってくれるキッチンアイルーをまだそれぞれ一匹ずつしか雇えない。だからその分、アーサーとフランシスに対しては思い入れも強い。
「うーん、仕方がないなあ」
作品名:パロ詰め合わせ1 作家名:ことは