彼の愛人の話をしよう
あいつら、とは、彼の取引相手だろう。苛立ちを込めた彼の言葉に菊はそうですかと適当な相槌を打って、ベッドの用意を終えた。大きく空いた窓にカーテンを二重に敷き、一気に暗くなった部屋に明かりを灯す。
そうしてベッドに腰掛けると、ロヴィーノへ手を伸ばした。
「お待たせしました」
ロヴィーノが壁から身体を離し、菊の元へ歩み寄った。一歩で詰まった二人の距離はロヴィーノが菊の手を取って、そのままベッドに押し倒したことで更に縮まる。ふくよかなスプリングが二人分の体重を受け止め、落ち着きはらって跳ねた。
続きは本にて
作品名:彼の愛人の話をしよう 作家名:碧@世の青