ブギーマンはうたえない 〈序章〉
ブギーマン♪ ブギーマン♪
キミは怪物ブギーマン♪
モミの木よりも大きな背に、大きな手! 真っ黒のコートと真っ黒のハットをまとって夜の街へ繰り出そう♪
キミが愛する、キミを愛する人間のいる街へ!
*
うたを。うたをうたおう。
いのちを、きみにあげる。
だいすきなきみのために、おれはうたをうたおう。
これはとってもしあわせなこと。
「♪ ♪」
おれはここでうたをうたう。ニンゲンをあいするために、うたをうたう。おれがうたうと、ニンゲンはよろこんでくれるんだ。
「♪」
まいにち、まいにち。おれはかぎりなくうたう。たのしい、うれしい。ときにはさみしい。けどやっぱりいとおしい。
「♪ ♪ ♪」
ふと。みえないひとみで、ソラをみあげる。せいかくにはソラはない。だってここはマチのおくふかくにあるおれのねどこ。
どうして、ソラをみあげようとおもったんだろう。おれのせかいにひかりはないのに。
だけど、どうしてかそこにひきつけられて。そこをみあげたさきに、おおきなおとがした。
とたん。
「?」
ちいさな、ちいさなソラがふたつ。
おれのくらやみにしずんだせかいのなかに、まいおりたった。
「みつけた」
きれいな、アオのともしびが。
***
作品名:ブギーマンはうたえない 〈序章〉 作家名:七枝