教えてあげる
※注意※
・パラレルです(捏造)
・臨也別人注意!(いい人そう)
・子シズ(8歳~10歳くらい)
「知らない事、知りたい事、静雄くんが望むなら…なんでも教えてあげるよ」
「いざや…」
―おれが、いざやと出会ったのは数ヶ月前だった。
いつも登下校は弟の幽と一緒だった。
いくら男でも、幼い子供が一人で道を歩いているのは危険だと母親が言ったから。
誘拐されるかもしれないと言う理由以外にも、おれの異常な力が原因で弟の幽に何かしようとする奴らが居るかもしれない、から。
おれ自身に何かしてくるなら、良いんだ。相手が例え年上だろうと、熊のような大男だろうと、負けない程の力があった。
異常だと、可笑しいと、周りの奴らに恐れられる程の力が好きでは無かったし好きになれそうにもなかったけれど、おれ相手では勝てないからと幽に何かしようとする奴らから幽を守ることが出来る。
それだけは、良かったと思う。
弟の幽に自分のプリンを食べられた事にキレて冷蔵庫を持ち上げたその日から、自分は周りの人たちとは違い『異常』な体質なんだと知った。
怒りを抑える事も出来ず、キレる度に机や標識などの大人ですら持ち上がらないであろうモノを持ち上げ振り回している内にクラスや学校の人たちには恐れられるようになった。
キレて暴れる度に、怒りを抑える事の出来ない自分が嫌になった。
つい最近まで一緒に笑いあっていた筈のクラスメイトが、化け物を見るかのような目で自分を見る事も寂しかった。
それでも、幽と両親だけは怖がらずに今までと変わらず接してくれたし、自分を愛してくれた。
だから、大事な弟の幽が自分のせいで嫌な思いをしないように何があっても自分が守ってあげれるように登下校を共にしていた。
ただ、自分が日直の当番であったり先生に呼び出されたりするとどうしても幽と一緒に帰れなくなってしまう。
待っていてもらう事も出来るが、そうすると帰る時間が遅くなり帰る時間が遅くなればなるほど危険が増してしまう。
変なおじさんはもちろん、近所の所謂不良たちと出会う確率も高くなってしまうのだ。
いくら幽の事を守る自身があっても、そういう場面を出来るだけ幽に見せたくなかった。
だから、自分が遅くなってしまう時は待って貰うのではなく先に帰えるように言ってあった。
一人で帰るのは危ないから、出来るだけ友達と一緒に帰るように言ってあるし幽は無口で無表情だと言われるがそれでも自分よりもしっかりしているから大丈夫だとは思うけれど
それでも、やっぱり心配なのは変わらない。
「もう、こんな時間だ…」
今日も先生に呼ばれて帰るのが遅くなってしまった。
季節的にまだ外は明るく暗くはないが、それでも先に帰らせた幽が何事もなく家に帰ったかどうかが心配だった。
急いで帰るために、普段はあまり使わない裏道を通って帰ろうと人気のない細い道へ入り
角をまがった瞬間、何かとぶつかった。
「ぅわっ」
「ってぇな!ん?なんだ、ガキがこんな所うろちょろしてんじゃねーぞ!」
ぶつかった衝撃で、転びはしなかったものの蹌踉けてしまった。
何とぶつかったのか、と思った直後に聞こえてきた声に柄の悪い連中の内の一人にぶつかったのだと理解した。
理解したと同時に、その柄の悪い連中が誰かを囲んでいる事に気がついた。
別に、何をしていようが自分には関係ないしどうでも良いのだが急いで帰ろうとしている自分の帰路を塞いでいる事と、ぶつかった事に対してグダグダと長ったらしく言ってくる事、そして服を掴みかかってきた事に
イラッとした。
気がつけば、その場に立っていたのは自分と柄の悪い連中に囲まれていた誰か。
またやってしまった、と思いながらもその場を立ち去ろうとした瞬間
「すごいね、君」
そう言って、普通ではあり得ない場面を目撃していたのにも関わらず
おれを化け物だと恐れる事なく、名前も知らない誰かはニッコリと笑った。
今まで何度も似たような事があったけれど、一度も自分に対して恐れる事なく話しかけてきた奴は居なかった。
だから話しかけてきて、尚かつ恐れずにニッコリと笑っている自分の目の前の人間を無視して立ち去る事が出来なかった。
「…おれが、恐くないのか?」
柄の悪い連中に囲まれていた誰か―おりはらいざや、と名乗っていた―は、おれの事を恐れなかった。
それだけでなく、何故かおれの事を気に入ったらしい。
いざやは、近くの高校に通っている学生らしい。柄の悪い連中に囲まれてどうしようかと思っていたときにおれが通りかかったのだと言っていた。
あの後、いざやはおれに近づいたと思うと頭を撫でて「ありがとね」と言っておれが来た方向へと歩いていった。
おれの事を恐れないだけでなく頭を撫でてお礼を言ってくれたいざやが、忘れられなかった。
―たぶん、嬉しかったんだ。
自分に恐れず触れてくれる人は、家族以外には居なかった。
新羅も恐れず自分に接してくれたけれど、家族と新羅以外には居なかったのだ。
それなのに、初めてあって目の前で自分の異常なまでの力を見ていたのにもかかわらず
恐れなかった。
笑いかけてくれた。
たったそれだけだったけど、それが嬉しかった。
そんな事があって数日過ぎた。
その日も幽と共に学校から家へと向かい歩いている時
「あっ!良かった、やっと会えた」
「この前の…」
この前会った、おりはらいざやという人に声をかけられた。
一緒に居た幽は不思議そうにおれといざやを見ていた。
「この前のお礼してなかったと思ってね、だけどあのとき俺も急いでいたし静雄くんの名前しか聞いてなくてどうしようかと思ったんだ」
「家の場所も連絡先も判らなかったから、この前会った付近で静雄くんを探して見たんだけどなかなか会えなくて、諦めかけてたんだけど会えて良かった」
そう言って、いざやは前と変わらずニッコリと笑っておれに話しかけた。
お礼をする、といういざやの申し出は断った。お礼をされるような事は何もしていないから、気にしないで欲しいと思ったから。
それで終わるかと思ったいざやとの関係も、実は近所に住んでいる事や親同士が顔見知りであったこと―なんでも自治会の集まりで何度か話したことが有るらしい―
なんだかんだで、家族ぐるみで親しくなった。
いざやが暇なときは、幽やおれと一緒に遊んでくれたり遊園地や動物園に連れて行ってくれたりした。
学校から出された宿題がわからなかったときも、教えてくれた。
両親が出掛けて居ないときも、一緒に留守番もしれくれた。
初めていざやと会ってから、数ヶ月経つ頃にはすっかり仲良くなり幽やおれにとっては良いお兄さんだった。
母親もいざやの事を信頼していたし、いざやが家に来るのも日常的になってきた。
そんなとき、両親共に仕事で何日か家に帰れなくなった。
長い期間では無いけれど、だからと言って家にまだ幼い子供だけにするのは心配だったようで
母親はいざやに居ない間の面倒を見て貰えないか、とお願いしていた。