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きみは神さま

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そうこう考えている間にがらりと扉が開いて見知った相手が入ってきた。
「おや、珍しい」
来訪がではなくて彼の表情が珍しかった。
大抵憤懣やるかたない、という面持ちで入ってくるのに
今日は何か物憂げな表情を浮かべている。
「邪魔する」
「うん、そこに座って。今お茶を入れるよ」
今朝買ってきたばかりの缶を開けて茶葉の良い匂いを楽しんだ後お茶の準備をする。
普段ならそれを待つ間いらいらと言葉をかけてくるのに今日に限っては借りてきた猫のように大人しい。

「はい、一応砂糖とミルクは自分で入れてね」
コトリとソーサーを置き、順番にシュガーポット、ミルクポットと並べていく。
それを律儀に見やってぽつりと青年は言葉を零した。
おそらくずっと言いたかったのだろう言葉を。

「なあ新羅、耳付きって何だ?」

その言葉は僕の国では誰もが知っていて、彼の国では決して馴染みがなかったものだろう。
耳付き、というのは文字通り獣の耳が付いている人間のことだ。
大抵人間の身近な動物、犬や猫のものが多い。
人間の耳とは別に存在しているものだから、聴覚器官が一体どうなっているのか
甚だ疑問だったりする。
「そういうことを聞いてくるってことは、耳付きの人間に会ったんだね?」
「ああ。今日会った。俺のこと不思議だって言われた。耳見られたら酷いことされるみたいな顔してたんだ。
なあ、新羅、ああいう人間てあれか、動物とかのハーフとかか?」
「ぶはッ、よりにもよってそれかい静雄!動物との間に人間は子どもを生せないんだよ、猿とでさえ無理なんだからね。
いや、実に面白いなあ」
「ぶん殴っていいか」
「いやいや、そうだよね君はこの大陸の出身じゃないからねえ。彼らも切っちゃったりすることが多いからわからないんだよねえ」
「切る?」
「ああ、順を追って説明するよ。ええとね」
耳付きの記録は数世紀前からある。突然変異の現象であり、遺伝上の問題と言うわけでもない。
主な症例としては獣の耳や尾が付いており、それらは個人差はあるものの聴覚や骨にそれほど影響を与えてはいないらしい。
実際に耳付きの人間に実験をさせてもらった記録があり、それによれば被験者はほぼ人間の方の耳でのみものを聴いており、
尾も尾てい骨からは生えているものの歩行には全く支障がなかった。
本来、その事実は異常以外の何物でもない。神経も血管も通っているというのに。本来の器官の役割を全く果たしていないのだ。
結果的に彼は耳と尾を切除しているが切り離されたそれらを調べてみてもそれらはまぎれもなく動物のそれであり、
まるで身体から切り離した途端、『ただの動物の耳と尾』になってしまったかのようだ、と記されている。
彼自身の遺伝子は全くの人間のもので、動物のものは混じっていなかったそうだ。
残念ながら戦時中で大半の記録文書は焼けてしまったため
『付いたままの状態での実験』記録は残されていない。個人的には必ず行っているはずだと思うが。

こうした記録が発表されるたびに彼らの未知が深まるばかりで、迫害が厳しくなる。
今では耳付きは悪魔の象徴、不吉の具現ということで生まれたわが子がそうならば
病院に頼んで切除してもらうことが大半だ。
そう、これには遺伝子は関係ない。普通の親から耳付きの子が生まれることもあるし、その逆もある。
自分にしてみれば彼らは未知なる物質をその身に宿しながら生きているのだ。
これほど素晴らしいことは無いだろうに。

そうだ、自分と同じことを言っていた奴がいた。
「新羅、俺のこの耳は何でできているんだろう?触った感じはそのまま猫のそれだ。
自在に自分で動かせる。触覚もある。でもここから音は聞こえない」
そりゃ脳みその真上に聴覚器官はないからね、と返しておいた。


作品名:きみは神さま 作家名:おりすけ