二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ボカロの見る夢。

INDEX|1ページ/3ページ|

次のページ
 
ボカロの見る夢 

side:KAITO


そろそろ、マスターが学校から帰宅する時間だ。

俺がそわそわしていると、玄関を開ける音がする。
急いで出迎えれば、そこには、制服姿のマスターが。

ああ・・・可愛いなあ・・・。

「ただいま」
「お帰りなさい、マスター」
マスターは、俺の顔を見ると、首を傾げて、
「そっか。今日明日は、カイトと二人っきりなんだっけ」
「えっ、あ、まあ、そうですが・・・」
いきなり言われたので、思わず動揺してしまった。

マスターのご両親が、週末を利用して温泉旅行に行ったので、今日と明日は、マスターと俺しかいない。

マスターは、ちょっと微笑むと、
「よろしくね、カイト」
「あ、あああ、はい、あの、よろしくお願いします・・・」

な、何をよろしくするんだ、俺は・・・。
い、いや、別に、その、他意はないんだ、他意はっ!!

「カイト?どうかした?」
「え?」
「顔が赤いけど・・・熱でもあるの?」
「あっ!!い、いえ、大丈夫、です」

ししししまったっ!!マスターと二人っきりだとか、考えたら・・・。

心配そうに俺を見上げるマスターに、俺は、無理やり笑顔を浮かべて、
「ほんとに、大丈夫ですよ。ご心配なく」
「なら、いいんだけど・・・」
「あの、き、着替えてきてください、マスター。お茶、入れますから・・・」
「うん。じゃあ・・・お願い」
そう言って、マスターは階段を上がりかけたが、「忘れてた」と言いながら、戻ってくると、
「カイト、ただいま」
そう言って、俺に抱きついてきた。
柔らかい感触に、女の子特有の、甘い香り。

うあああああああああああああああああああああああああっ!!

「あの、ま、マスター・・・?」
「今日は、誰もいないから、いいでしょう?」

いいいいいや、誰もいないからこそ、いけないというかっ!!
いや、いけなくないんだけど!!

「あの、お・・・お帰り、なさい、マスター」

おおおおおおおお落ちつけ俺!!何時ものことじゃないか!!
マスターにその気はないんだ!!変な考えを起こすな!!

俺は、気力を振り絞って、そっとマスターの背中に腕を回す。
マスターは、小柄で細身なので、まるでガラス細工のようだ。

あああああ思いっきり抱きしめたい!!
抱きしめてキスしたい!!
むしろ押した・・・いやいやいやいやいや!!!

落ちつけ!!!
そんなことしたら、マスターの傍にいられなくなるぞ!!!

「着替えてくるね」
そう言って、マスターは、俺から離れ、二階に上がる。

あああああ・・・

ほっとしたのと残念なのと、相反する思いを抱えながら、マスターの後ろ姿を見送った。



俺は、マスターの両親が、マスターの為に買ったVOCALOID。

来た当初、マスターがあまりに無表情なので、俺は嫌われてるのかと思った。

何とか気に入られたくて、散々努力した結果、分かったのは、マスターは笑わないのではなく、笑えないのだということ。

はっきりと聞いたわけではないが、マスターとマスターのご両親に、血のつながりはないらしい。
そして、誰もが、マスターの実の両親の話題を、慎重に避けていることから、マスターに表情がないことと、何か関係があるのだと思う。

それでも、最近は、少しずつ、笑顔を見せてくれるようになった。

多分、俺は、その辺の理由からも、購入されたのだと思う。
実体化させるのは、気楽に払える金額じゃない。
それだけ、ご両親は、マスターを大事にしているのだろう。

だから、マスターには、いつも笑っていてほしい。


俺は、マスターの為に、紅茶とクッキーを用意する。
リビングのローテーブルの上に置き、自分で食べるカップアイスを持ってくると、文庫本を手に、マスターが下りてきた。

部屋着に着替えると、ほっそりとした体の線が、余計に目につく。

少し、細すぎるんじゃないだろうか・・・。

でも、最近、胸がふくら・・・いやいやいや!!

ばかばか俺のばか!!マスターを邪な目で見るなんて!!


「ありがとう、カイト」
マスターは、カーペットの上に腰を下ろすと、ソファーにもたれかかった。
俺も、マスターの隣に腰を下ろすと、ソファーを背もたれ代わりにし、アイスの蓋を取る。
マスターは、紅茶にふーふーと息を吹きかけてから、ふと、
「カイト、いいかな?」
「はい?」
俺が聞き返すと、マスターは、するりと俺の脚の間に入る。

は・・・はいいいいいいいいいいいいいいいいい!?

思わず呼吸困難になった俺に、マスターは気付かないようで、そのまま、体を持たれかけてきた。
「こうすると、落ち着くの」

おおおお俺は落ち着かないんですが!!!

マスターは、体をひねると、悲しそうな目をして、
「ごめん。嫌だった?」
「えっ!?あ、い、嫌じゃない、ですよ!ちょ、ちょっと、驚いただけで・・・」
俺は、あははと笑ってごまかす。
それでも、マスターは、目を伏せて、
「ごめんね。嫌だったら、嫌って言っていいんだよ?」
「い、いえ!ほんとに、嫌じゃないですよ。ちょっと、あの、い、意外というか・・・マスターが、こういうことをするのは、初めてだから・・・」
「うん・・・さすがに、親の前ではね」
そう言った時、マスターの頬に、ほんのり赤みが差す。

あ・・・

その顔を見た瞬間、頭の中が真っ白になって、

「カイト?」
マスターの、怪訝そうな声。
気がついたら、マスターの体を、後ろから抱き締めていた。

えっ!?ちょっ!!
うあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!

「あ、あの、す、すいません!!」
慌てて、手を離す。

ば・・・ばかばか俺のばか!!!
ま、マスターに何てことを!!!

「ううん。いいだけど」
そう言ってから、マスターは、ちょっと笑って、
「子供みたいだって、思ったんでしょ?カイトは優しいのね」
「い、いえ・・・あの・・・」
「ごめんね。でも、私が甘えられるのは、カイトしかいないから」

ああ・・・。

マスターの気持ちは嬉しい。
でも、その「気持ち」は、俺が欲しいものじゃなくて・・・。

「マスター、俺に気を使わないで下さい。その、俺でよかったら、いくらでも」
マスターは、再び、俺の体にもたれかかると、
「うん。ありがとう、カイト」
そして、「アイス溶けちゃうよ?」と付け加えた。

あ、す、すっかり忘れてた!!

柔らかくなったアイスを、スプーンですくう。
マスターの髪にこぼさないよう、慎重に口に入れた。

うん。美味しい。

アイスの冷たさが、俺の頭を冷やしてくれるようだ。
もうひとすくい。

マスターは、片手に本、片手に紅茶のカップを持って、俺の動きを見守っていたが、何を思ったのか、カップを戻すと、
「一口、ちょうだい」
と言って、俺の手を取り、スプーンを口にくわえる。

えっ!?

マスターは、何事もなかったかのように手を離し、再び紅茶を手に取った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

俺の方は、頭がジンジンするほど動悸が早くなり、思わず固まってしまう。

こ、こ、これって、か、間接キス!?
ま、ま、マスターの唇に、俺の

「カイト?」
作品名:ボカロの見る夢。 作家名:シャオ