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超次元にはよくある光景

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豪炎寺修也はかっこいい。
なにせ天才、日本一に輝いた雷門サッカー部のエースストライカーだ。黄金の左脚から繰り出される数々の必殺技はそんじょそこらのキーパーでは触れる事すら難しい。学校の成績も素行も決して悪くはないし、正義感も強い。切れ長の瞳と逆立った髪の毛は決して穏やかな印象を与えはしないが、彼の今時珍しい寡黙な性格も相俟って「クールでストイック」という好評価へと転じている。
豪炎寺修也は優しい。
一見そうは見えないし、かなり分かりづらいが、妹がいるせいもあって年下と女子には優しい。自分より弱い者は庇護すべきというスタンスであるから、マネージャーやクラスの女子、時々河川敷で一緒になるKFCの面々にはその分かりづらい優しさを如何なく発揮している。かけられた側には今ひとつ伝わっていない事も多いが、彼と親しい人間には気遣っているのがなんとなくわかる。
豪炎寺修也はモテる。
それはもう、大層モテる。
どれくらいモテるかと言えば、転校したてで熱狂的な女子のファンがつき、その女子が彼の活躍を生で見たいがために外国まで追っかけてきてしまうくらいにモテる。前述の理由があればそのモテっぷりも理解してもらえるだろう。本人にその自覚がなくとも。
そう、豪炎寺修也はモテるのだ。たとえそれが男相手であっても。







「豪炎寺さん、隣いいですか?」

FFI日本代表イナズマジャパン、その朝食の場で豪炎寺にそう話しかけたのはチーム最年少の虎丸だった。豪炎寺の反応を待たずに虎丸は彼の右隣に腰を下ろした。

「豪炎寺さんっていつも朝早いですよね」
「そうでもないさ。朝食を作るマネージャーの方がもっと早い」
「でも、メンバーの中じゃ早い方じゃないですか。今だってほら、俺達と飛鷹さん、不動さんくらいしかいないじゃないですか」

まだ人の少ない食堂。加えて他の二人が無口なせいもあって、虎丸の声は存外大きく響いた。
朝食は六時から七時半までと時間が区切られていて、各自起きてきた順に自由に摂る事になっていた。早くから来る者とギリギリまで寝ている者とでかなりばらつきがある中で、豪炎寺は前者に属していた。ちなみに後者代表はキャプテンの円堂である。
壁の時計は六時半を過ぎたところだ。虎丸が一方的に話し、豪炎寺がそれに短い相槌をうつ形で会話は進んでいく。
まだ小学生、加えてかねてから憧れの存在であった豪炎寺と親密になれた嬉しさがあるのだろう。虎丸が豪炎寺の傍にいる時は大抵こんな様子だ。

「それで、俺この前隣のクラスの女子からラブレター貰ったんです!」
「へぇ、そうなのか」
「付き合ってほしいって言われたんですけど、断ったんですよ。そしたら「そうだよね、サッカー大変だもんね」って言われて」

いちごジャムをたっぷりと塗ったトーストを頬張りながら虎丸がしゃべる。口の中に物を入れたまま話すのはよくない、と日頃から母に言われているのだが、豪炎寺と一緒だとそれも忘れてしまうらしい。

「そんな理由で断ったんじゃないんですけどね……だって俺、好きな人が……」
「虎丸」
「え?」

唐突に豪炎寺が話す虎丸の言葉を遮った。虎丸が目をぱちぱちと瞬かせていると、口元に豪炎寺の右手が伸びる。豪炎寺は戸惑う様子の虎丸を意に介さず、その唇を親指の腹で拭った。

「ジャム、ついてたぞ」

表情ひとつ変えずにそんな事を言う豪炎寺。確かに豪炎寺の指は僅かに赤いものが付着している。それを彼は、何のためらいもなく舐め取った。

「ご、豪炎寺さん……!」

ぱっと幼い顔が赤く染まる。虎丸はフォークを半ば放り投げるようにしてテーブルの上に置くと、豪炎寺の右手を両手て握りしめた。

「俺、好きな人いるんです!」
「そうか」
「すっごくかっこよくて、年上で、優しくて、それで……なんて言うか、豪炎寺さん、あなたが!」
「おはよう、豪炎寺。それに虎丸」

再度虎丸の言葉を遮ったのは、豪炎寺ではなかった。

「鬼道、おはよう」
「朝から随分と仲がいいな?羨ましい限りだ」

朝食のトレイを置きながら、豪炎寺の向かいに腰を下ろしたゴーグルの少年。その顔には言葉通りの感情などどこにも宿っていない。それどころか皮肉めいた色を浮かべ、虎丸の手を見つめている。一番嫌なタイミングで会話に割り込まれた虎丸は不快を隠しもせずに、渋々といった表情で豪炎寺の手を離した。

「おはようございます、鬼道さん。……こっちより仲良しの不動さんの方に行った方がいいんじゃないんですか?」

刺々しい口調でもって言う虎丸。いきなり引き合いに出された不動が向こうのテーブルで派手に牛乳を吹いたが、虎丸の視界には生憎と入ってこなかった。

「どこに座ろうと俺の勝手だろう?それに俺と不動はそれ程仲良くもない」
「そうなんですか?連携技を一発で出せちゃうくらいだから、てっきりすごく仲がいいのかと思いましたよ」
「それじゃあなかなかタイガーストームが完成しかなったのは、お前と豪炎寺の仲がよくないせいだった、という事になるな」
「…………」
「…………」

ベーコンエッグをトーストに乗せて食べている豪炎寺の脇で、音もなく火花が散っている。

「豪炎寺、今日は俺と連携技の練習をしよう!」
「いいえ俺と練習しましょう!」
「どっちでも構わないが、それより早く食べたらどうだ?」

鬼道と虎丸の諍い、その当事者である自覚は全くない豪炎寺。自覚をしたとしても「自分は関わる連携技が多いから」程度にしか思わないのだろう。
そうこうしているうちに時刻は七時を回る。この頃になるとメンバーが続々と食堂に入ってくる。
ここまでくると食堂内はかなり賑やかになってくる。先に食事を終えた不動や飛鷹と言った静かな面々が出て行き、代わりに綱海のような元気のいい(悪く言えばうるさい)選手が席についた。不動は律義にテーブルを拭いてから出て行ったようだ。
豪炎寺ももう皿は空っぽになっているので早く歯を磨きに行きたいのだが、いかんせん虎丸と鬼道がそれを許してくれない。

「ねえ豪炎寺さん、俺とこんなゴーグルマントだったら俺の方がかっこいいですよね!」
「こんな小学生よりも俺のようがずっといいだろう?」

手持無沙汰になってとりあえず水を飲む豪炎寺に詰め寄る二人。豪炎寺にすればかなりどうでもいいというか、二人に優劣をつけた事などないし、つけるつもりもない。しかしそう言っても目の前の彼らが納得する訳がない事も知っていたので、だんまりを決め込んだ。
二対の視線を豪炎寺が無視する形で、膠着状態を迎えた食堂の一角。先程鬼道が闖入してきたように、今度は土方と吹雪が割り込んでくる。

「なんだ?朝から元気いいなお前ら」
「ここ、空いてるよね?」

しかし鬼道と違うのは、両者共に全く悪意や他意がない事だ。
豪炎寺の左隣に土方が、その向かい、豪炎寺の斜向かいに吹雪が腰を下ろす。

「それにしても皆、起きるの早いよね。キャプテンなんてまだ寝てたよ。風丸君が起こしに行ったみたいだけど」

眠そうに目をこすりながら言う吹雪。それとは対照的に元気のいい土方は豪炎寺の背中をぱん、と叩きながら「豪炎寺はうちにいた時から早起きだったもんな!」と笑って見せる。