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【イナズマ】『風丸一郎太』

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風丸一郎太は、男から見ても、惚れ惚れするようないい男だと思う。
それは空色の長い髪が、風に翻る様だとか、しなやかな足が地面を蹴る様だとか、きゅ、とつり上がった凛々しい眉と、その下にある夕日色の真っ直ぐな瞳だとか、自信たっぷりに、あるいは、何かを思い巡らすように組まれた腕の形だとか、日焼けした肌と肌のあわいの色だとか、それは、もう、上げれば切りなく、整った容姿をしていて、けれど、何よりも風丸一郎太を風丸一郎太として、いい男だと言わしめるのは、その、一本太い筋が通ったような、しゃんとした内側だと、俺は思う。
見た目が整っているゆえに、線の細さを感じさせる部分もあるのだけれど、全体的に繊細さよりも力強さが勝っているのは、つまり、この内面から発せられている、眩しいくらいの強さが頭の先から爪の先までもれなく発揮されていて、しんしんとこちらに伝わってくるからなのだろう。
自分に厳しく、他人には優しく、勝気で、負けず嫌いで、けれど思慮深く、何よりも『誰かの為に』戦う事が出来るその性分は昨今珍しいくらいのいい男だと言えるだろう。

「……というのは、言い過ぎだろうか」
「何が?」

思わず口から零れた声に反応して、ぐるりと風丸が振り返った。
一拍遅れて、空色の髪がしなやかに揺れる。
俺とは違う、少し癖はあるけれど、真っ直ぐな綺麗な髪だ。
正直な所、ものすごく羨ましい。
せめてその癖のなさの半分でも分けてもらえたら、自分の癖毛ももう少し見られたものになると思うのだが。

「おーい、どうした?」

目の前でひらひらと手を振られて、ふと我に返る。
首をかしげて、こちらを覗きこむその頬は夕日を受けて、輪郭が金色に染まっていた。
うん、やはりいい過ぎ、ということはないだろう。
風丸一郎太は、色々な意味でいい男だ。

「いや、なんでもない」
「そうか?アイス、溶けるぞ?」
「あ、ああ」

鉄塔広場の一角。普段、円堂が練習している場所とは、反対側だ。
風丸曰く、穴場らしい。確かに眺めもいいし、人も余りこないから静かだ。
ぼんやりしたり、考え事をするのにちょうど良いかもしれない。
途中にあるコンビニで、アイスクリームを二つ買って、くだらない事や部活の事、特に話題には事欠かずに、ぶらぶら歩いてここまで。