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【イナズマ】『風丸一郎太』

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学校帰りの買い食いなんてしたことないと言ったら、信じられないといった顔をした後、酷く重大なことのように、

「なら今日行こう。部活が終わった後に」

余りに真剣な顔で言うから、思わず吹き出したら、心外だ、という顔をされた。
断る理由なんて一片もなかったので、部活終わりに連れ立って、今に至る。

「む、美味いなこれ。また買おう」
「何だ?」
「限定きなこ味」
「へえ」
「一口食べるか?」

うんともいやとも言う前に、風丸が木のスプーンでアイスをひとさじ、すくって目の前に差し出すもので、俺は苦笑しながら口を開ける。
舌の上で溶ける冷たい甘さは、さっぱりとしていて、きな粉の風味がしっかりとついていた。

「うん、美味い」
「だろ。リピート決定だな」

言いながらざくざくとアイスをつついてる風丸に、思わず小さく笑うと、風丸はふと、手を止めて何事か思いを巡らせるように、不意に遠くまで視線を投げた。
空色の髪、夕日色の瞳。
視線の先、空はその間の曖昧なグラデーションを描いて、町並みを金色に浮かび上がらせていた。

「話してみないとわかんないもんだよな」
「……何が?」
「もっと性格悪い奴かと思ってた」

顔面にボールぶつけられたし、と言いながら風丸はスプーンを運んでいる。
ずく、と胸の内側で疼いた不穏な感覚に、思わず手を止めた。

「……すまん」
「いや、別に、根に持ってるとか怒ってるとかそういうわけじゃないんだ。ただ、印象っていうのは変わるものだな、と思って」
「俺も」
「ん?」
「俺も、お前はもっとキツい奴だと思ってた。見るといつも眉を吊り上げてたからな」
「悪かったな、もともとこういう顔だ」
「別に悪くない。というか、むしろいいと思う。良い顔だな」

俺がそう言うと、風丸は一瞬目を丸くして、すぐにすう、とそれを細めた。
揺らぐ、夕日色。

「ありがとう。鬼道にそう言われると嬉しいな」
「……そうか?」
「ああ」

余り普段は見せない、眉まで綺麗な弧を描く笑い方に、素直な感想を述べただけなのに、妙に気恥ずかしくなるから困る。
本人は自分の一挙手一投足がどんな影響を周りに与えるのか、いまいち分かっていない。

「じゃあ、改めて、よろしくな。鬼道」
「ああ、こちらこそ」

なかなか、アイスを食べる手は進まない。
外側と内側が、何か熱いもので隔てられているような感覚。