二次創作小説やBL小説が読める！投稿できる！二次小説投稿コミュニティ！

矢霧波江は、賢く美しい少女だった。試験の順位は何時も一桁代であったし、教師に目立った反抗もしない、いわゆる優等生と言えた。同年代の少女たちとくらべて落ち着いた雰囲気を持ち、それがまた波江の美貌と噛み合っていて、大抵の男子は淡い憧れを込めて波江を見た。
そう、波江は賢く美しい少女だった。遜色なくその言葉が似合った。
けれど、けっして賢く美しいだけではないのが、矢霧波江だった。
高校に入学して最初の数ヶ月の内は、波江の容姿に惹かれ好意を告げる男子は何人もいた。そのすべてを、想い人がいるのだと波江は断った。少年たちのどんな熱烈な告白にも、波江は無関心にそう言い切った。私が愛しているのは誠二だけよと、言うのだ。
その誠二というのがどんな人物で波江とどんな関係なのか、恋する少年たちは恋敵として当然調べた。そして誠二という男のフルネームが矢霧誠二であると真実を知った時に、少年たちの恋は終わる。
今では、波江の通う高校の誰もが知っている。誠二というのが波江の弟で、波江は弟を愛しているのだと。