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そう告げた自分を反対して怒ってくれたただ1人の人。
彼なら、自分のために泣いてくれるだろうと思った。弟以外に、1人だけ。
反対しながら、結局守護者として一緒についてきてくれた。
幼馴染まで連れて。
どれだけのありがとうを言えばいいんだろう。
最後くらいなら言えるだろうか。
「…もし、最期のそのときに俺がためらったら」
「うん」
「そのときは、お前の手で決着をつけてほしい」
見上げた先のマリンブルーの瞳が、軽く見開かれる。
残酷な願い事を託していることは百も承知で、永遠に消せない十字架を彼に背負わせることになることも承知で、…願いを口にする。
この世でたった一人、全てを賭けて愛した弟じゃなく、唯一の他人でありたった1つの未練になる男に、託したかった。
忘れないでほしい。
この世に、自分がいたことを。
「…お前じゃなきゃ、嫌だ。…頼む」
「………うん。いいよ」
「…………ありがとう」
彼と歩く未来があればよかった。
弟と生きることを諦めた後にもまだ残る未練に、少しだけまた悲しくなった。
そっとフランシスの手が伸びてきて、冷えたアーサーの手を握る。
「最後まで、付き合ってやるから」
「…ん」
惜しんでくれたら、いい。
そうすれば、もう何も残せなくても笑える気がした。