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病的愛的恋愛

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僕の最大の誤算は、あの人を好きになってしまったことだった。

「・・・っもう臨也さんなんて知りません!別れます!」
「あっ、そう。別にいいけどさ。鍵はちゃんと置いて行ってよ」
「っわかりましたよ!あなたなんか好きにならなきゃ良かった!」

そう叫んで僕は臨也さんの家を飛び出した。
泣きながら詰めた荷物が肩に重い。けど、仕方のないことだった。
久しぶりの誰もいない我が家に到着すれば、しん・・とした空気が僕を迎え入れる。
数日前までは当たり前のことだったのに、今はその孤独に肩が震えた。

(いざや、さん・・・いざやさん。臨也さん、臨也さん・・・っ!)

玄関に崩れ落ちた僕は、それを包んでくれる人がもういないことに涙がこぼれた。
どうしてこうなってしまったのか・・ぼんやりと今までのことが思い出される。
最初はそう、あの人を目で追っている自分に気付いた時だった。



「あれ、臨也さんじゃねぇ?」

そう言って正臣が指をさす。
学校帰りにいつものようにナンパに付き合わされていた僕がその指の動きにつられて視線を向けると、確かにそこにいたのは臨也さんだった。
相変わらずの黒いコートに黒い服。
だけどいつもと違ったのは、一人でいる姿を見ることが多いあの人の側に女の人がいたことだった。

「女の人、だね」
「あぁ彼女とかかな?っつーか美人だなあの人ー!さすが臨也さんってとこか・・?」

やな感じだぜ、とぶつぶつ不満を言う正臣の言葉に、僕は軽くふぅんと返す。
2人を姿をじっと見ていれば、臨也さんはとても手なれた感じで、女の人に手を差し伸べた。
嬉しそうに女の人はその手に触れて、とても自然に腕を組んだ。
歩き去っていく2人を、なんとなしに見つめる。

「・・・仲、良さそうだね」
「ま、臨也さんって猫かぶってるっていうか、必要な時は人あたりよく接する人だからな」
「そう・・・」

当然その日も正臣のナンパは上手くいくこともなく、そこで解散となった。

それから街を歩けばときおり臨也さんの姿を見た。
時には女の人と(それも毎回違う人と)腕を組んで歩いていたり、静雄さんと戦争していたり、サラリーマン風の人と話していたり・・・臨也さんは群衆の中にいて目立つほうではない。
黒い服も埋没しがちだし、わかりやすい奇行をしてるわけでもない。
だけど一度その姿を意識して見てしまうと、目が吸い寄せられてしまうのだ。
その秀麗な顔に、洗練された動きに、自信ありげな余裕を浮かべる口元や、冷たい色を宿す瞳。
そういったものを一度意識してしまえば、その姿が見えなくなるまで目で追ってしまう。

「最近よく臨也さんの姿見かけるよね」

だから僕は正臣にそう伝えた。
そういうと正臣は少しびっくりしたように

「臨也さん?いや、俺全然見てねーけど・・・なんだ、あの人もしかしてお前の周りに出没してたりすんのか!?」
「えっ、ううん!そうじゃないけど、街でよく見るなーって思って・・・」
「そうかぁ?」

正臣は首をかしげる。
僕も同じように首をかしげた。

「なんでかな・・よく見ると思ったんだけど・・・・」
「俺は会いたくねぇしなぁ・・っつかお前もあんまり関わったりすんなよ?絶対酷い目にあうからな!気をつけるんだぞあの人には」

心配そうなその目に、とりあえず頷いておく。
僕には臨也さんはそんなに悪い人には思えないんだけど・・正臣が僕を心配してくれているのはわかっているから、その気持ちはありがたくもらっておく。
でも正臣はあんまり納得できないようで、うーんと唸った。

「あの人見ただけで不幸になりそうな気がする・・・ほら、黒猫が横切ったら不幸が訪れる!的な?だから見ないようにしとけ!」
「それ難しいよ正臣・・・っていうか何その根拠」
「ありだろ?折原臨也を見たら不幸になる!ってさ」

その時僕が思ったのは、

(あの人を見ないなんて難しいよ)

だった。
正臣と一緒に笑いながら、臨也さんのあの真っ黒な姿を思い出す。
長い足に翻るコートの裾、ふわふわのファーが揺れる背中、とくに整髪料などつけていないのだろうサラサラと流れる黒髪。
その日、学校帰りにその姿を見ることはできなかった。
家に帰りパソコンを立ち上げる。
制服を着替えながらチャットルームをのぞくと、そこには甘楽さんがすでにログインしていた。

(なんだ、チャットしてたんだ。だからいなかったんだな)

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作品名:病的愛的恋愛 作家名:ジグ