病的愛的恋愛
『いらっしゃいませ太郎さんー!待ってましたよぉ!』
[こんにちは]
【どうもこんにちは甘楽さんセットンさん】
キーボードをたたきながら、ふと思う。
(あれ・・?僕は臨也さんを見たかったのかな)
でなければチャットでいなかったことに安心した理由がわからない。
いや、むしろ
(僕は安心したのか。臨也さんがここにいてくれたことに・・・なんで?)
[ということでリトルグレイは恐ろしい存在なんです!]
『えぇ〜セットンさんってそういうの信じじゃうタイプなんですか?ねぇ太郎さんはどうですかー?』
(あんなに臨也さんを僕は見ていたのに、正臣はなんで見なかったの?いや、僕が臨也さんを見ていた?見ていたかった?)
『あれ?太郎さん?太郎さーん』
[どうしたんですか?席はずし中?]
(どうして見ていたいんだ?なんで街に出たら臨也さんを探してるんだ?どうして会えなかった理由を知って安心してるんだ?)
『うーん戻ってくるまで別の話しでもしますかー』
[そうですね、じゃあこの前聞いた話なんですけど]
内緒モード『どうしたの帝人君、何かあったの?』
(臨也さん・・・!!)
僕に向けられた臨也さんの言葉。
モニターを映るそれを見て、僕はなんとも表現できない想いに包まれた。
僕と臨也さんがつながっているそれ。
一方的に見るだけじゃない、姿を探すだけじゃない、向こうから僕に繋げてくれる言葉、行動。
(それって、なんだかすごいことじゃない・・?)
内緒モード【すみません大丈夫です臨也さん。ちょっと着替えてました】
内緒モード『あぁ学校帰りだね。お疲れ様。フリーズしてるのかとびっくりしたよ』
僕から臨也さんへ発信した言葉に、臨也さんから僕へ返ってくる言葉。
それがなんでか、とても嬉しい。
(どうして、どうして、臨也さんが?嬉しい?なんで?チャットなんていつものことなのに、どうして?)
[ということで、そこでは無理心中があったそうなんです!心霊写真を撮りに行くと呪われるって話で]
『きゃー怖い!っていうか一方的に好きでもない人に殺されるってどんな気分なんでしょうねー?』
[そりゃ嫌でしょう。でも好きな人に殺されるのも嫌ですけど]
『えーそうですかぁ?ま、殺されるのは嫌ですけどぉ』
内緒モード『好きな人を殺してでも自分のものにしたいって気持ち、実に興味深いよねぇ。帝人君はそう思わない?』
ちかちかと光るカーソルを動かす。
こんなにものろのろとキータッチをするのは初めてだった。
内緒モード【今の僕にわかる気持ちは、好きな人になら殺されてもいいって、気持ちだけです】
「臨也さん」
ぽつりと呟く。
自分で打ち込んだその文章がぼんやりと目に映る。
(僕には臨也さんを殺せない。だって死んでほしくなんてない。だけど、臨也さんが僕を――)
僕を、好きだから殺す。とか言ってくれたのなら
内緒モード【臨也さんに殺されたら、幸せだなって思います】
僕を、好きだと言ってくれるなら。
内緒モード『へぇ・・・熱烈なラブコールだね。興味深いよ、帝人君。なら物は試しだ、付き合おうか?』
そう、その臨也さんの軽い興味心が、すべての始まりだった。