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【イナズマ】『鬼道有人』

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部誌を閉じて立ち上がると、鬼道も静かに立ち上がり、ぐ、と一つ伸びをした。
5cm下にある、ゴーグル越しの視線。

「俺は、いいと思うけどな」
「何が」

鞄を提げて、部室の鍵を回しながら表に出る。
鬼道がうちの制服を着ているのが、未だにちょっと慣れない。
ユニフォームと私服しか見たことがなかったせいかもしれないけれど、青いマントの印象が強すぎるんだろうか。
いや、それが無いならないで、鬼道らしさがなくなってしまって余計におかしなことになるのかもしれない。

「鬼道の手」
「……よくわからん」
「そうか」
「ああ」

年代物の扉は、閉めるのにもコツがいる。
一度引き上げて、鍵をかけながら落とす。
俺も最初は苦労した。多分、鬼道もしばらく苦労するんだろう。

「俺もきれいだと思う」
「何が」
「だから、鬼道の手」

鍵と部誌をまとめて右手に持ちながら、首を巡らせる。
鬼道は何とも言えない顔をして、何かを言いかけた後、それを飲み込むように苦笑した。

「どうも」
「いやいや」

連れだって歩き出す。
部誌を提出して、鍵を返したら今日の部活は終わりだ。
ごく当たり前みたいに鬼道は隣にいる。
こんな景色、つい一月前はとてもじゃないけど想像できなかったのに、考えるより前に、今の空気が心地よいと受け入れた自分がよくわからない。
ただ、今、鬼道と歩幅を合わせて歩くのは苦ではない。

「雷雷軒、寄っていくか?」
「今行ったら見知った顔がわらわらいそうだな」
「はは、有り得るな」