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【イナズマ】『鬼道有人』

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雷門では、部活動の管理委員に部誌を提出しなきゃならないっていうのが、部活動をする上の決まりの一つで、これを怠ると、場合によってはペナルティが科せられる場合もある。
とはいえ、書き込むこと自体はそんなに項目があるわけでなく、同時に作業化されている分面倒なものでもあった。
今日は、俺と鬼道が当番だったので、二人で残って記入作業を始めたのが十分前。
今、鬼道の右手と、俺の左手はぴったりと重なっている。
他意はない。ただ、目の前で頬杖をついて俺がペンを動かしているのを眺めていた鬼道に、なんとなく手を広げて差し出してみたら、なんとなくあちらも重ねてきて、そのまま同じ姿勢を保っている、というだけの話だ。
鬼道の手は、サッカーをしている割に色が白い。
帝国は確か、屋内の練習場があったし、もともと焼けない性質なのかもしれない。
対して俺は、陸上とサッカーでひねもす日を浴びっぱなしなんてことはザラだったので、特に露出の多い腕は見事な小麦色に焼けている。
陸上の時はタンクトップにショートパンツだったから、サッカーを始めるようになって、微妙に色の差異が出てきているのがちょっとした悩みだ。
体の色がグラデーションになっているのは、今はともかく、夏場着る服に困りそうな気がする。

「風丸、」

咎めるように、でも、手を引いたりはせずに、ただ困惑しきり、という顔で鬼道が僅かに首を傾げる。
掌の形は少しずつずれながら、ひたりと重なっている。
少し自分のものよりもひんやりとした温度が、掌の内側にある感覚は悪くない。

「いや、手」
「手?」
「小さいな、と思って」
「……悪かったな」
「別に悪い事じゃないさ」
「お前は」
「うん?」
「指が長いな」

間接半分長い俺の指と鬼道の指の付け根は、大体同じ場所にあった。
手の大きさは人並みだと思うが、指の長さを指摘された事は初めてだ。
そう言われると、そうなのかもしれない。

「いいな」
「何が」
「綺麗な手だ」

いいな、ともう一度、独り言のように呟いて、鬼道は自分から手を離す。

「早く部誌、書いてしまえ」
「ああ、うん」

部員の出欠、今日の練習メニュー、軽い感想、今後の活動予定を簡単に書いて、最後に自分と鬼道の名前を連名で書き込んだ。
鬼道は何一つ書いていないけれど、まあ、次の当番のときに全部書いてくれればいい。

「よし。出来た」