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籠と海

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「好きに呼べといった。無理に同じにする必要はねぇってな」
「そうか、楽しくやっているんだな」
「おうよ」
会話を続けながら、家康が今度は自分が怒りでぶるぶると震えていることを感じていた。
ああ、ちくしょう。殺されてしまえばよかったのに。そんな酷い事を思う。
たった一つの絆が彼を癒し始めている事、喜ばなくてはならないのに喜べないのは
これもまた絆のせいに違いないと思った。
一方的な、ものだが。



***

用事を済ませ、去って行った友人の背中を見送りながら元親は目つきを鋭くした。
家康よ、俺が気付かないと思うか?そう思いながら。
同時にやっぱりなとも思う。
家康の三成に対する執着とも呼ぶべきもの。
会話をしている最中、ずっと拳が震えていることには気付いていた。
嫉妬と怒りと、やるせなさ。その全てから感情を溢れさせている事には。
会話の最中、元親は家康に三成には気を付けろと言ったが
実際は三成に家康には気を付けろと言ってやりたかった。
あの様子、本当にいつ攫いに来るか判らないと思った。
それは最早配下として欲しているとは言えない。
己に逆らおうとも、呪いの言葉を吐こうとも、傍に置こうとする行動。
好きなんだろうな、と元親は思う。
そうしてまで傍に置きたいと思うほどに、あいつを愛しているのだろうと。
多分、自分が知らない昔から。
けれど。
「石田」
恐らくまだ馴染めない、海の仕事を不慣れながら手伝っている姿に声をかけた。
すると三成はすぐに寄って来る。
先程家康に向けた顔よりも随分穏やかな顔で。
「なんだ」
「船に行く、お前も来るか?」
言うと三成は悩んだ顔を見せた。困ったような。
そしてその顔のまま
「………ここが済んでからでも構わないか」
最後まで手伝いたい。と三成は言う。
それに元親は笑顔を浮かべた。
「あぁ、待っててやる」
「わかった」
そう言って仕事に戻っていく姿にもう一度思う。
けれど、と。
「譲れねぇな」
俺もあいつを、気に入っちまったんだ。
あの真っ直ぐさを、自分もまた愛してしまった。
だから
「お前から、守るぜ」
籠の鳥になんざさせるものか。
あれは、これからここで海鳥になるのだから。
自由に、してやりたい。
何に囚われる事もなく。
考えながら元親は空を見た。
そこを丁度白い鳥が飛ぶ。自由に。
籠の鳥よりも、飛ぶ鳥のほうが美しいに決まっている。
これは友情とはまた別の問題だ、なぁ家康よ。
元親は心の中で友人に語りかけた。
作品名:籠と海 作家名:u_to