欺瞞を燕下する
今朝から体調が悪く、無理矢理登校したもののお昼休みにどうしても食べ物を口にすることが出来ず、散々迷った末同じクラスの斉藤に半ば引きずられるような形で保健室へと向かった。運悪く保健の先生は不在で、代わりに居た保健委員長の伊作先輩に促されソファに座ると、今まで我慢していた気持ち悪さがどっと押し寄せてきた。くらくらとする頭を抱えて耐える。おろおろとする斉藤を教室に帰るように叱り(きっと言わなければこれを口実にサボるに違いないのだ)差し出された体温計を脇に挟んだ。私の具合悪さが結構酷いことを察した先輩が、棚の上から布団を取り出している。奥まった場所にあったそれを手慣れた様子で出す先輩を見て、慣れているなあと思った。
ピピピ、と体温計が鳴ると同時に、授業の開始を告げるチャイムが鳴った。手早くベッドの準備を終えた先輩が、見せて、と手を延ばす。自分で見るのも億劫だったのでとても助かった。どうやら思ったより熱が高いらしく、追い立てられるようにベッドへ寝かされた。先輩の声でおやすみ、と聞こえたのを最後に、私の意識は落ちていった。
体調の悪さの原因はおそらく睡眠不足が主であろう。テストも近くなり、学校内の雰囲気もいつもより張りつめている。そんな中、今度こそ平に勝って1位になってやろうといつも以上に勉強に励んでいた。少し、無理をしすぎていたのかもしれない。ついでに最近委員会の方も忙しかったのだ。今までは其程委員会に打ち込むこともなかったのだが、副委員長になり、委員長を支える立場になってそうもいかなくなった。しかし、苦ではなかったのだ。一生懸命に仕事に打ち込む委員長を見て、つい自分も我を忘れて仕事をすることが多い。気が付けば学校に遅くまで残っていて、先生に怒られながら二人で帰る。成績も素行も良い私が怒られることは滅多になく、貴重な体験だった。そう先輩に話すと笑いながら謝られた。その笑顔が何故かしばらく頭から離れなかった。何故か知りたくてまた時間を忘れて遅くまで先輩と委員会の仕事をこなす。二人で帰ることも多くなった。