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欺瞞を燕下する

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私はその場から逃げるように階段を駆け下り立ち去った。
抱き合っていた二人が、不意に腕を緩めて見つめ合っていたのだ。
そこから先の展開は見ずとも判る。あの雰囲気は幼馴染みの其れではない、間違いなく、恋人同士の其れだった。



昇降口で、靴を取り出そうと屈む。途端に何故か何かが込み上げてきた。口を押さえる。しかし零れたのは涙だった。収まった筈の嘔吐感と一緒に襲ってきてその場から立ち上がれない。早く帰らなければ、と思うのに体が思うように動かない。


(私は、)
嗚呼、私はあの人が羨ましいのだ。
潮江先輩の腕の中にいる、あの場所を独り占めにしている先輩が、どうしようもなく。
今まで自分が持ち得た物全てを引き替えにしても、その場所が欲しいと思った。誇ってきたものがとても薄っぺらいように思えた。それでも、手に入らないだろうということも判る。



夕日が校内に差し込んでゆっくりと日が落ちていくのを映している。
眩しい光が自分を照らし、ひどく惨めだった。たった今気づかされた失恋が日の暑さと共に焦がしてゆくようだった。
作品名:欺瞞を燕下する 作家名:sui