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みとなんこ@紺
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いと小さき世界は廻る

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第一話







「ふ…あぁぁぁ?…」
辺りに人影がないのを良いことに、大きな欠伸を一つ。ついでに伸びも。


―――――ヒマだ。


声には出さなかったのは、自分の仕事に対するせめてものプライドだったのか。
欠伸で涙のにじんだ目を擦りながら、彼はがしがしと明るい茶色の髪をかき混ぜた。
自分が平和だというのは本当は平和で良いことなんだろうとは思うが。
もう少しなぁ、こう、何かあってくれた方が助かる。でないと・・・。
「このままじゃ街の何でも屋にされちまうぜ…」
事件が起こらないことは良いことなんだろうが、せっかくの保安官のバッチが泣こうというものだ。
最近は仲裁をかってでていたギルド同士のもめ事も減り、一時期煩かった何とか教団(名前は忘れた)もおとなしい。大小様々なゴシップネタを市井に提供してくれる領主を筆頭とする貴族連合も、本国の招集に答えて主な面々が留守にしているおかげで静かだし。
例のおかしな宝石泥棒もすっかりナリを潜めていることだし。
概ね、街は平和だ。
・・・だがそうなると仕事らしい仕事も減ってしまうことに。
そんな彼の微妙な心の機微もあずかり知らぬ街の空は、突き抜けるように青い。
ひどく透明な高い空を一人仰いで、ふい?っと大げさに溜め息を一つ。

「…遊戯んトコでも行くかな」

・・・結局、毎度のオチはこうなるのだ。
一人ごちて、街の西へと足を向けようとした矢先。
ふと、視界がかげった。
「お」
見上げた先に照り輝く陽を弾く強い光に、思わず目を細める。
その中を羽ばたきもせずに滑るように宙を舞う、鳥の影。
悠々と風を捉える翼を広げたその姿は、こんな街中でそうそうお目にかかれるようなものではなく。
「・・・ユウギ?」
その見慣れたシルエットに彼は目を細めた。
チカチカと、何か光を反射するようなものを足で掴んで運んでいるらしい。風に煽られるように何度も金の輝きが光を弾いて明滅している。
鳥は一度上空を大きく旋回すると、何かを見つけたのか、迷わず一点を目指して降りていき、通りの向こうへと姿を消した。
「あっちは・・・広場か。よし」
どうやら、西の旧市街まで行く手間が省けたようだ。
彼は迷わず、鳥の舞い降りたであろう広場へと走り出した。