いと小さき世界は廻る
『・・・相棒。起きろ、相棒』
「う?え、…あれ?」
慌てて身を起こせば、そこはいつもの自分の店、で。
帳簿を付けるつもりが、何時の間にやら眠っていたらしい。
『大丈夫か?』
「んー、別にしんどくはないんだけど…うあああー…ねっむーい…」
そのまま猫も真っ青な大あくびを一つ。
海馬家の予告状騒ぎから、既に3日が経っていた。
が、まだ微妙に調子が戻らない気がする。
よく考えたら、昼は昼で店の切り盛りだのなんだの、夜は夜でもう一人の自分と共に海馬邸、とここしばらくまともに休んでいなかったからだろうか。
それはもう一人の遊戯も同じ事なのだが、様子を見る限り、別に疲れが溜まっているようにも見えず。
・・・単にボクが体力ないって事なのかな。
同じように生活している筈なのに、ちょっと凹む。
『どうした?』
何か気になる事でも?と聞いてくる半身を見上げて、遊戯は何でもないよと笑って返した。
「・・・そういえば。結局、海馬くんとこから色んな物貰っちゃったねぇ…」
正しくはモクバくんから、という名目になっているけれど。
「あれ全部見なきゃいけないっていうのが正直しんどいよ、ボク」
『…あいつら限度って物を知らないからな』
翌日、馬車で届けられた今回のギャラ、というか戦利品。
・何だか曰わく付きらしい宝石いくつか
・何だか曰わく付きらしい絵画数点
・何だか曰わく付きらしい骨董品諸々
取りあえず、つっこみ所の多すぎるラインナップだった。
『まずその“曰わく”をはっきりさせてから寄越せばいいものを…』
「それ、多分勝手に鑑ろって事だよ、きっと」
『手抜いてやがる・・・』
2人は、はぁ、と同時に顔を突き合わせて溜め息をついた。
「何か、結局、兄弟喧嘩みたいなものに巻き込まれただけみたいな気がするよねー…あ、でも従兄弟だったかな?」
『・・・もうどっちでも良いが、巻き込まれるのはごめんだ』
「あははは・・・」
しかし。
珍しくあからさまに愚痴るもう一人の遊戯には悪いけれど、一旦関わってしまった以上、まだまだこれからも色んな事に巻き込まれるだろうことは、想像に難くない。
さて、今度は何が起こるのやら。
口では面倒だと言いつつも、何のかんのと状況を楽しんでいる節のある2人は、取りあえず仕事場を占領する戦利品たちの選定からはじめる事にした。
ちなみにこの時に寄越された“曰わく付きの何たら”から、後日また新たな騒動に巻き込まれる事になるのだが、それはまた別の話。
end
作品名:いと小さき世界は廻る 作家名:みとなんこ@紺