昭和初期郭ものパラレルシズイザAct.8
本当にそのつもりだったのだろうと思わせる自信で
門田にニッと笑いかける
「しっかし強ぇなぁオッサン?アンタうち来ねぇ?」
「はぁ・・・?」
「いや丁度うち今強ぇ用心棒探しててさ。」
アンタならぴったしだよ
給料
うちは結構いいぜ?
と
その笑顔と言葉に思わず
職探しの途中だったものでつい引っ掛かってしまったのだ
そんなきっかけを思い出して
溜息の出る門田の膝の上が
急に何かで重くなり
何かと見ればそこには
「・・・オイ。」
「んー?」
「これはどういう了見だ?」
「いいじゃんか。ちょっと貸せって。」
門田の膝の上には
千景の頭が乗っており
床机の上へだらりと寝転んだ千景が
「ラムネ2本も飲んだら眠ぃ」と
門田の膝枕の上で欠伸をする
「客来たら起こして。」
「お前な。」
「いいじゃん。客来るまでだって。」
「・・・ったく。・・・しょうのねぇ。」
妙に懐かれてしまって困るのは最初からずっとで
甘えられるのにも辟易しては居るが
何故か邪険にしきれないのは
門田自身にも理由が掴めないところだった
客が
来るまでだからな
と
ついそのままにしてしまう門田の膝の上で
千景がそれは満足そうににっとして
あぁ解ってらぁと髪を擦りつける
それを
呆然と
たまたま買い物を言いつけられて通りかかった静雄が
遠くから見ていたのを
門田は
幸せなことに全く気付いて居なかった
作品名:昭和初期郭ものパラレルシズイザAct.8 作家名:cotton