昭和初期郭ものパラレルシズイザAct.9
どうぞと席を譲られて
襖の隙間から中を覗いた帝人は
なぁんだと肩を竦めてクスリと笑う
「え・・・。帝人さん知ってたんですか?」
「うん。前からね。」
「嘘。いつから?」
「うーんと。」
僕が店に来た日に
か
なぁ?
と
首を傾げる帝人に青葉は少し驚いた
「えっ?本当に?」
「うん。何となく。」
「・・・いいんですか?」
「え、何が?」
「このままだと、臨也さんをあのバカに取られちゃいますよ?」
「あぁ・・・。うん。」
そうか
君は嫌なんだね?
と
にっこりと微笑みかけられて
青葉はまた少し驚く
この
如何にも純朴そうな新入りの帝人は
侮れない
と
「・・・そう言う貴方は?どうなんです?」
「僕?僕は・・・」
臨也さんが
と
本当に心底そう思って居る笑顔で
帝人は言う
「好きなだけで。それでいいよ。」
「・・・何も望まないと?」
「望みなんて最初から無いから。」
と
帝人は微笑んだ
「あるとしたらそれは願いだ。」
皆に
幸せになって欲しいと思う
「願いだよ。」
と
帝人は純粋な笑顔で青葉に微笑みかけ
その
余りの混じり気の無い微笑みに
青葉は
ふと
背筋が
寒くなるような
そんな気がして
冷や汗を浮かべながら
ニコリと
お得意の可愛い笑顔で
帝人に
微笑み返した
作品名:昭和初期郭ものパラレルシズイザAct.9 作家名:cotton