買い物に行きましょう。
「さっきの話だが」
リヒテンシュタインの気持ちが落ち着いたとみてドイツが切り出した。
「あー、俺は、その、口下手だ。そしてファッションとか装飾とかそういうものにも興味が薄い。
あまりに酷いのはもちろん分かるが、基本的に本人が気に入ったのならばそれで良いと思う」
一つ一つ言葉を探しながら自分の想いを伝えようとした。
腕の中にはリヒテンシュタインを抱き寄せたままだ。
リヒテンシュタインはただじっとドイツの言葉に耳を傾けている。
「それに昔、イタリアに『ドイツと買い物にくると張り合いがないんだよねー』と言われたことがある」
情けない話だが、とドイツは少し体を離した。
そしてすぐに体を預けるようにしてリヒテンシュタインの肩に額をあてた。
「だから、その、貴女にもそう思われるのが嫌だったんだ」
ちらりと見えたドイツの顔は赤かった。
「・・・こんな男だが、また一緒に買い物に来てくれますか?」
ドイツはぎゅっとリヒテンシュタインを抱き締めた。
腕の中に閉じ込めてしまえる小さく温かい存在がとても愛おしいと思った。
「はい。はい。喜んでご一緒します」
また溢れだした涙はドイツの胸に吸い込まれていくばかりだった。
作品名:買い物に行きましょう。 作家名:飛ぶ蛙