メルヘンクエスト―序章
本に指が触れた途端、アルヴィスの体に衝撃が走る。
タトゥによる激痛でも、電撃を受けた時のものとも違う、何かが体を通過する様な・・・。
アルヴィスの眼が衝撃を受け見開かれるのと時を同じくして・・ドロリ、真っ白だったページから真っ黒な何かが大量に溢れ出した。
最初は本を開いたギンタ、その次はアルヴィスが“黒い何か”に飲み込まれた。
「ギンタ!アルヴィス!?」
スノウの悲鳴に近い声、ドロシーは間に合わなかったと唇を噛んだ。
「オヤジ!早く扉を開けなさい!ココから、本から離れるのよ!」
そう叫んだドロシーの背後に・・・。
「ドロシーちゃん!」
ナナシの声に反応し、後ろを振り返ったドロシー。
大きく見開かれた桃の瞳に、迫り来る“黒”が移った。
「畜生!空かねぇ・・・っ!」
「いやぁぁ!」
「アラン!スノウ!・・・うわぁ!?」
「っつ!!?」
広間全体を侵食した“黒”はギンタ達全員を飲み込むと、ゆっくりと引いて行った。
全てを飲み込んだ本はまた、独りでに表紙を閉じた。
カチリ、と音を立てて閉まった留め具の石は、怪しげな色で淡く発光していた。
広間に残ったのは本と、床に倒れ伏した7人の姿だった。
TO_BE_CONTINUED_?_
作品名:メルヘンクエスト―序章 作家名:春雲こう