メルヘンクエスト―1章
「んあ?」
「良かった・・みんな、ギンタが気付いたよ!」
ギンタが最初に見たのは自分の顔の真ん前に在った小雪の・・・いや、スノウの顔。
彼女達はビックリする位そっくりな面立ちをしているが、持っている雰囲気は確かに違っている。
目が合った途端に安堵の表情を浮かべたスノウに、寝起きで頭が回転していないギンタは取り敢えず挨拶をした。
「あーおはよう、スノウ。もう朝飯か?」
「ギンタ・・・・エライずれとるで。」
「なんだ、ナナシもいたのかー。朝からどうしたんだ?」
「いっぺん殴って起こしてやった方が良いんじゃねぇか?」
言い終わるが早いか、大きな拳がギンタの脳天を直撃した、狭い空間内にゴンッという音が響く。
「ちょっとオヤジ!ギンタンになんて事すんのよ!」
ドロシーの怒りの声、そこからワンテンポ遅れて、ギンタは呻き声を上げる。
「ってぇ~~~~・・・・いひなりなんだよ!舌噛んじゃただろ!」
強制的に覚醒させられた涙目のギンタ、拳を落とした人物を探し視線を彷徨わせて、今自分がいる場所が自分の全く知らない場所である事に気付いた。
「・・・・どこだ、ココ?」
「ようやく目が覚めたみてぇだな。」
胡坐をかいて腕を組むアラン、何時もの通り大きな体で踏ん反り返っているのに、今は何かが違う。
「ギンタが起きたんスか?」
不意に聞こえたジャックの声、声の方へ視線を巡らせると・・・。
ジャックがいた。
当たり前の事だが、ジャックがいた。
詳しく言うなら、細長い枝を持ち何頭もの羊に囲まれているジャックが。
メェー。
「・・・・・ひつじ?」
「混乱しとるなぉ・・ギンタ、君広間での事覚えとる?」
ナナシに言われ、途切れた記憶を辿る。
「(街に行って・・・おっちゃんから本貰って、広間で皆に見せたんだよな。そしたらアルヴィスが・・!!)」
そこまで辿って、ギンタは全てを思い出した。
自分は本から出て来た黒い物に飲み込まれたのだと。
視界が覆われる寸前に見えたのは、目を見開いたアルヴィスに襲い掛かる“黒”。
「アルヴィスは!?」
目覚めてから姿を確認出来ていない仲間、ギンタは彼の姿を探す。
「大丈夫だよギンタン。・・・まだ起きて無いけど、アルヴィスはココにいるよ。」
ドロシー指差された方には、寝ているアルヴィスが・・。
「(良かった、無事だった・・・)・・って、アルヴィス青っ!!?」
ギンタの言った通り、草の上で横になっているアルヴィスの顔色は青白いを通り越して真っ青になっていた。
「ちょっと、ドロシー、大丈夫なのか・・?」
「大丈夫よ。原因は解ってるし・・その内目を覚ますわ。」
「なら良いけど・・・・俺達、どうなったんだ?」
「私も聞きたい。ドロシー、ギンタが起きてからって言ってたでしょ?」
どうやらドロシーは何か知っている様だ。
羊を前進させているジャックも、ドロシーの話に耳を傾ける。
「ギンタンも目覚めたし、説明するわ。」
彼女曰く、今ギンタ達が居るのは本の中、らしい。
作品名:メルヘンクエスト―1章 作家名:春雲こう