world of...-side red- #01
ふぅ、と息をついたアルフレッドの横顔を覗き込み、マシューは小さく笑った。
「アル、お疲れ」
「ん!マシューもなんだぞ!」
「さっき連絡入れといたから、迎えの車がこっちに来るはずだよ」
「相変わらず首尾がいいねぇ」
「世話の掛かる人が居ると、おのずとそうなるのさ」
「あっ、言ったな~!」
じゃれ始めた二人のすぐ近くで、耀は頭を抱えていた。
イヴァンは不安げにそれを見つめる。
「耀くん、ホントに大丈夫?」
「ん……」
「抱っこしてあげようか」
「ざけんなある」
キッと耀はイヴァンを睨みつけた。
頭痛に耐えている所為もあってか、視線にはいつもより鋭さが増している。
「やだなー、冗談だよ!でも、耀くん今にも倒れちゃいそうなんだけどねー?」
意地悪げに笑うイヴァンは、至って楽しそうだ。
真意を読み取った耀が、憎々しげに呟く。
「……わざわざ言わせる気あるか。もうちょっと良い趣味持つよろし」
特に返答もせずに、イヴァンは微笑んでいる。
しばらくすると、観念したのか、耀が溜め息をついた。
「ったく……。イヴァン、手貸すあるね」
「うふふ、待ってました♪」
ぱぁっと笑顔を咲かせたイヴァンは、ひょいと耀をその背に負ぶった。
そのうち、耀の細い腕が首元に絡みついてくる。
「乗り心地は?」
「悪くない……ある」
「寝てもいいよ」
「……明白了」
耀はそのまま、イヴァンの背に顔を埋め、静かに眠りに落ちていった。
イヴァンは、再び微笑む。
「おやすみ――耀くん」
青白い光に照らされた寂れたゴーストタウンから、生を持つ者たちが去り、硝煙とたっぷりの鮮血が風景に色を満たしていた。
見る者など、既に亡く。
観た者は、天に在る月のみ―――
to be continued...
作品名:world of...-side red- #01 作家名:三ノ宮 倖