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world of...-side red- #01

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特に感情のこもっていない瞳で、それを見下ろす。

「偶然に救われたみたいだけど、そのままじゃあどうせ……」

銃身の細い拳銃が、アルの懐から取り出される。
カチャリ、とそれを構える音がした。

「楽に逝かせてあげるよ――see you」

パァン、という発砲音と共に、僅かに命を繋いでいた個が、事切れた。
一部始終を、マシューは目を背けることなく見つめていた。

「さて、大広間はこっちだったかな?」

気を取り直してあの二人の待つ部屋を目指し始めたアルフレッドの背を眺めながら、マシューは少し、微笑んだ。

「……頑張らなくちゃ」

*

それから、やっと部屋に辿り着いた二人は、開け放たれた扉から中へ入っていった。
人の気配に、先に中に居たイヴァンと耀が反応する。

「やっ!お勤めご苦労様!」
「あいや……。やっと来たあるか、この職務怠慢」
「ごめんね、耀さん!アルってば支度するのに時間掛かったとか言っちゃってて……」
「アルくんらしいね。ふふっ」

四人は和やかな会話を展開させる。
現れた金髪の男に、地に倒れ伏す二人の男たちは目を見開いた。

「お、お前は――!」
「やはり……来ていたのか、“奴ら”が……」

下方から聞こえてきた声に、アルフレッドが目を向けた。
視線は、蔑むようにも、哀れむようにも捉えられる。

「ああ、そういえば忘れてたよ――今日の野暮用」
「なんだと……!!下手に出ていれば―!」
「黙ってくれないかな?」

蒼い瞳が冷たく光った瞬間、銃声が響き、耀のナイフが刺さった男が、いとも簡単に終焉を迎えた。

「おっと!勢い余っちゃったなぁ」

先程の一瞬が嘘のように、アルフレッドは明るく笑い飛ばした。
たった今、一人の人間が息絶えたのを、意にも介さず。
しかも、それは自らの手によるものだというのに。
両肩に傷を負った男は、目の前に広がる光景に恐怖を覚えた。

何故、笑っていられる――?

アルフレッドの視線が、その男に移される。
顔を覗き込むように、アルフレッドは目の前にしゃがみこんだ。

「何故こうなったかは……分かるだろ?」
「……っ!」

冷や汗をかく額に、それよりも冷たい銃口が押し当てられる。
見つめる瞳は、楽しげに細められた。

「“暗黙の掟”(ルール)を破った者には罰を……当然だろ?それを鎮守するために、俺たちは居るんだから。ダークヒーローっていうのも、悪くないよ」

――勿論、そんなのはタテマエだけどね。

「Good bye!」

事が済んで、アルフレッドは立ち上がると服をパンパンをはたいた。
振り返った彼を見て、マシューが「あ」と声をあげた。

「?」
「返り血。また付けて……。そういうの好きなの?」
「んー……そうかもな!我ながらえげつないよ!」

帰ろうか、と蒼の瞳は嗤った。
静かに歩いていく背には、仕事を終えて家路に着く一般人と、なんら変わりは無かった。
その後を、マシューが付いて行く。
イヴァンは耀に手を貸して立たせると、その手を繋いだまま歩き出した。

四人が去った後には、二つの亡骸と、静寂のみが残された。


***


広場で奮戦していたルートヴィッヒたちは、やっとの思いで全てを粛清するに至り、あまりの重労働に皆そろって壁にもたれかかったり、その場に座り込んだりしていた。
他の地点から集まってきた仲間たちも、予想を遥かに上回る敵の数に疲労困憊の様子だ。
ただひとつ、おかしな点といえば―――

それだけの状況にありながら、この場に居る全員が、無傷だということだろう。

フェリシアーノはその場に大の字になって寝転んでいた。

「ヴェ~~~!もうダメ~っ!お腹空いたよぉ~、ピッツァ食べたいよ~」
「おい、今何時だと思ってる!もうじき夜が明けるんだぞ」
「俺も腹減ったしー……。パルシュキ寄越せー……」
「はぁ、これはかなりの重労働だったね……。俺も腹の虫が鳴きそうだよ」

諌めるルートヴィッヒを他所に、トーリスとフェリクスもそれに同調する。
フェリシアーノの近くで同じように寝転がっていたロヴィーノも、また同じようなことを言った。

「あんま腹減ったばっか言ってると、もっと腹減るぞ!……くそ、腹が鳴る~……」

悔しげに腹を抱えるロヴィーノの頭を、あぐらをかいて座っていたアントーニョが撫でる。
彼はいつも通り、底抜けに明るい笑顔だった。

「そない腹減るほど頑張ったんやな!偉いで~ロヴィ~」
「うっせー!馬鹿にすん――うぅ……」

反論しようとしたロヴィーノのお腹が丁度よく鳴ったので、アントーニョや近くに居た四人は一緒になって笑った。

一方、壁にもたれていた菊は、隣りに居たティノに話しかけられた。

「菊さん、お疲れ様です」
「あ……ティノさん。貴方こそお疲れ様です。慣れないことでお疲れでは?」
「いやいや、元は狙撃手ですから。戦闘自体は平気ですよ。でも――」

ティノは懐から拳銃を出し、菊に見せながら言った。

「今回は何の手違いか、コレ持たされちゃったんで……。勝手が違うから大変でした」
「分かりますね、私も銃の扱いには未だに慣れませんよ」

二人は苦笑いした。
こんな世界じゃ得意不得意なんて言っていられないのだが、それでも向き不向きというものはあるのだ。
ところで、とティノは話題を変えようと質問をした。

「アーサーさんは?」
「それなら……ほら、あそこですよ」

菊がすっと指差した方向には、サディクと一服交わしているアーサーが居た。
くすくすと菊が笑う。

「私、煙草の煙が苦手でして」

あの時だけは傍に居られないのです、とちょっと寂しげに呟いた。
ティノは思わず微笑んでしまう。

「惚れてますね~。菊さんってば」
「えっ?そ、そんな……やめて下さいよ」
「別に茶化してるわけじゃないですよ~。なんか、いいなぁって思ったんです」

ティノは自分の右側を振り返る。
其処には、木箱に座って船を漕いでいるベールヴァルトが居た。
菊もその視線を追う。

「僕も、あの人とはそういう仲ですけど……。やっぱり、時々不安になりますよね」
「……えぇ」

落ち着いた優しい響きは、それぞれの想い人に届くことなく、その場で収束した。
皆がそれぞれに休憩を取っている時、ヘラクレスは十字架をその胸に抱きながら、家屋の屋上で澄んだ星空を見上げていた。
いつの間にか黒猫が寄ってきたのにも気付かないほど、意識は投げ出されている。

そこに、元気の良い声が下から聞こえてきた。

「みんなーっ!!ご苦労様ーっ!」

ぶんぶんと手を振っているのは、この組織の主たる人物。
アルフレッドだった。
その後ろからは、マシューと耀、イヴァンが来ていた。

「帰ってよく寝るんだぞー!そしたら、皆でご馳走でも食べようじゃないかー!」

少年のような笑顔で労いの言葉をかける。
安堵したように皆は微笑み、ぞろぞろと帰り支度を始めるのだった。
作品名:world of...-side red- #01 作家名:三ノ宮 倖