二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

world of...-side red- #03

INDEX|1ページ/3ページ|

次のページ
 
肌を刺すような寒さの中、華やかな衣装に身を包んだ人々が、これはまたゴテゴテと装飾され、内部から明かりを放つ建物の中へと入っていく。

たった今車から降り立った女性は、色素の薄い長髪を風になびかせ、レンガ造りの建物を見やった。

「……悪趣味」





world of...-side red-
#03「A party of black princesses-百花繚乱-」





「こういうのって初めてだわ~、お姉ちゃん緊張しちゃう」
「何言ってんの姉さん」
「私もです……。どう振舞ったら良いのでしょうか」
「大丈夫よ、そんなに心配しなくても。いざとなったら私が助けるから♪」
「……暢気ねぇ、あんたら……」

後からぞろぞろと3人の女性と少女が降りてくる。

初めに降りてきた女性は、ナターリヤ・アルノフスカヤ。
全身をモノトーンで纏めた彼女は、緊張感の無い三人に溜め息をついた。
続いて来たのが、彼女の姉のライナ・ティモシェンコ。
濃紺のロングドレスに身を包み、ニコニコと微笑んでいる。
三番目の小柄な少女は、マリー・ツヴィンクリ。
全体的にふわふわとした衣装で、淡い水色のそれはとても可愛らしい。
最後に来たブロンドの女性は、エリザベータ・ヘーデルヴァーリ。
優しくリヒテンに声を掛けた彼女の身は、ライトグリーンのドレスに包まれていた。

車内から手を振るフランシスに見送られて、彼女らが向かった場所。
一見何のことはない、富豪のパーティー会場であるが、実のところ――
この場所で、敵対組織同士の情報交換と何らかの密談が交わされるらしい。とは、情報部のエドァルドの談である。

普段、他組織の監視がてら、暇潰しにハックをする彼だが(とんでもない趣味である)、その最中にこの情報を掴み、実際に同日とある富豪のパーティーが開かれるというので、上司のローデリヒを通じアルフレッドに報告したところ、今回の作戦が組まれた。

「遊びに来たんじゃないんだ」
「分かってるわよ、ナターリヤ。私たちがしに来たのは」

呆れ気味なナターリヤに、エリザベータはウインクしながら笑いかける。

「皆の為の仕事、でしょ?」
「……分かってるなら良いけど」
「そんなに身構えなくても大丈夫よぅ、もっと楽しみましょ♪ナタちゃん」

難しい顔をしたままのナターリヤの後ろから、ライナがひょっこり笑顔を覗かせた。
それに続いて、マリーも微笑みながらナターリヤを見た。

「私たちが力を合わせれば、どんな事になっても大丈夫ですよ。だからナターリヤさんも、笑ってくださいまし」
「! ……お前に言われると、なんだか弱るな……」
「あら?ナタちゃんったら可愛い。照れてるの?」
「笑うな姉さん」
「あ、入場始まったみたいよ。行きましょ、みんな!」

エリザベータの一声で、四人はぞろぞろと建物に入っていく人波に加わった。


今宵、頼れるのは己の勘と、友人だ。


*


建物の内部は、外見以上に豪奢な作りであった。
天井には絵画、壁にはどこぞの国から直接取り寄せたとかであろう壁紙、柱などにいちいち金箔が施されており、灯りは勿論シャンデリアである。
中に集まった人々の熱気も、このパーティーの裏側に潜むものを際立たせるかのように、異様な雰囲気を醸し出していた。

「うぇ。吐きそう」

ナターリヤは中に入るなり、軽く顔を青ざめさせた。
すかさずライナが、彼女の肩を支えてやる。

「大丈夫?ナタちゃん」
「いや、平気……」
「無理しちゃ駄目よ。もう、ナタちゃんはいつもそうなんだから」

ライナは二人に断りを入れると、テラスの方へナターリヤを連れて行った。
マリーが首を傾げ、隣のエリザベータを見上げる。

「あの」
「うん?なぁに?マリーちゃん」
「ナターリヤさん、どうなされたんですか?」
「あぁ、私も詳しく聞いたわけじゃないんだけど、大勢の人の前って苦手なんですって。体調崩しちゃって」
「でも、私たちの会合には参加していらっしゃいますよ」
「それだけ私たちの事を信じてくれてるのよ」

微笑んだエリザベータは、優しくマリーを撫でた。
そして、辺りを見回したが、まだ件の組織の人物らしき者は来ていないようだった。
もう一度小さな彼女を見て、エリザベータは笑った。

「仕事まで時間ありそうだし、出されてるお料理でも食べましょうか」
「……そうですね」

一瞬きょとんとしたが、マリーもすぐに小さく笑い、エリザベータに手を引かれて、フロアの中央付近にある料理の山へと向かって歩いていった。

一方、テラスの姉妹。

「はぁ……。やっぱ駄目だな、あれは」
「外はちょっと寒いから、誰もいないわねぇ」
「楽で良いよ」

テラスの縁に寄り掛かりながら、ナターリヤは息をついた。
過去にあった出来事から、彼女は人が大勢居る光景が滅法苦手だった。
空を見上げ、闇に浮かぶ星々を見つめて、彼女は呟いた。

「……こんなとこで弱ってる場合じゃないのに」

それを聞いたのか、ライナはナターリヤの頭を軽く小突いた。
突然の事に驚き、目を丸くしながら振り返る。
視線の先のライナは、憤慨したように腕組みをしていた。

「もう、無理しちゃ駄目って言ってるでしょ!頑張りすぎなの、ナタちゃんは!」
「だからって小突かなくても……」
「言っただけじゃ聞かないじゃないの」

腕組みを解くと、ライナはナターリヤの肩を抱いた。
いつもの柔らかい表情になり、妹の薄紫に透ける瞳を見つめる。

「……お姉ちゃんの心配のしすぎかもしれないけど、こういうお仕事するようになってから、ナタちゃん自分に厳しすぎないかしら。怪我して帰ったら、イヴァンちゃんも心配するよ?」
「……」
「それじゃ、お姉ちゃんは中に戻ってるね。風邪引かないようにね~」

ナターリヤから離れると、ライナは手を大仰に振りながら、建物の中へと戻っていった。
彼女はそれに軽く手を振り返し、見ていた空を再び仰いだ。

「まったく、私は子供じゃないって……」

ふと、視界の隅に何かがいるような気がして、ナターリヤはそちらを振り向いた。
姉が中に引っ込むのとほぼ同時に、別の窓からテラスへ、一人の男が出て来ていたのだった。
男は彼女に気付くと、人の良い笑みを浮かべながら近寄って来た。

「今晩は、お嬢さん。貴女も人を避けて?」

男性、というよりは青年で、落ち着いた色調の金髪を後ろへ撫で付けている。
服装をきちんとしており、外見から受ける印象はさほど悪くはない。

「まぁそんなところだな。人混みは嫌いだ」
「おや、意外な語調をなさる」
「女だから上品に喋らなくちゃいけないなんて、そんなの男の先入観だろう。あぁ言い忘れた、お前みたいなナンパ男も嫌いだ」
「出会い頭に嫌われてしまいましたね」

ははは、と笑って、青年は頭を掻いた。
ウチにこんなヤツ居たような、とナターリヤはデジャヴを覚えた。

「しかし、此処で会ったのも何かの縁――少し、お話しませんか」
作品名:world of...-side red- #03 作家名:三ノ宮 倖